「おかえりモネ」総集編 最終週“今”を映し出したワケ たどり着いた菅モネ抱擁 CP「一番難しかった」

[ 2021年12月29日 08:00 ]

連続テレビ小説「おかえりモネ」最終回(第120話)。2年半ぶりに再会し、手をつなぐ百音(清原果耶)と菅波(坂口健太郎)(C)NHK
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 女優の清原果耶(19)がヒロインを務めた今年前期のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」は29日、総集編(前編=後3・05~4・30、後編=後4・30~5・55)が放送される。東日本大震災を背景に「人の痛みと再生」に誠実に向き合い、見る者の心を静かに突き動かし続けた感動作。同局「透明なゆりかご」(2018年)「サギデカ」(19年)に続き、脚本の安達奈緒子氏とタッグを組んだ制作統括の須崎岳チーフプロデューサー(CP)にドラマを振り返ってもらった。

 <※以下、ネタバレ有>

 朝ドラ通算104作目。清原が主演した「透明なゆりかご」やテレビ東京「きのう何食べた?」などを手掛けた安達氏が紡いだオリジナル作品。タイトルにある「モネ」は主人公・永浦百音(ももね)の愛称。1995年に宮城県気仙沼市に生まれ、森の町・登米(とめ)で青春を送るヒロイン・百音が気象予報士の資格を取得し、上京。積み重ねた経験や身につけた技術を生かし、故郷の役に立ちたいと奮闘する姿を丹念に描き上げた。

 14年前期の「花子とアン」にプロデューサーとして参加した須崎CP。「当時、全力で時代ドラマに取り組みましたが、もし次に朝ドラを作るならば、是非、現代ドラマに挑戦したいと感じていました。安達さんも思いは同じでした。『今』を描きたい、描かないでどうする、と。現代劇の朝ドラは難しいと分かってはいましたが、果たしてやはり、本当に大変でした」。気象予報士という緻密なデータを基に成り立つ職業、東北の震災という非常に繊細な題材の描写。そこへコロナ禍という不測の事態が重なった。「まず物理的に撮影やロケは、どこまでできるのか。そんな暗中模索の中、この物語は何をどう描いていくのか。本当に日々手探りでした」と明かした。

 今作の制作が発表された昨年5月27日の時点で、プロットは「……数年後の2019年。予報士として一人前となった百音は、大型台風が全国の町を直撃するのを目の当たりにする。これまでに得た知識と技術を生かし、何とか故郷の役に立てないかと思った彼女は、家族や友人が待つ気仙沼へと向かう決意をする──」と終盤まで公表されていたが、劇中の時間は最終回(第120話、10月29日)でさらに数年先まで進んだ。

 残り3話となった第117話(10月26日)。亀島の永浦家を初訪問し、結婚のあいさつを終えた翌日、20年1月14日朝。菅波(坂口健太郎)は恩師の医師・中村(平山祐介)から「実は、呼吸器専門の医師を出してくれないかと要請がありまして。緊急らしくて。感染症なら人手が要るから」と急きょ東京に呼び戻された。

 新型コロナウイルスと明言こそしていないものの、現実とリンク。その後、百音と菅波は田中浜で再会を果たし、抱き合った。

 菅波「あなたと僕は、違う時空で生きてるのか」

 百音「ん?」

 菅波「2年半会ってない」

 百音「私たち、距離も時間も、関係ないですから」

 菅波「やっと会えた(両手を差し出し、百音を受け入れようとする)」

 百音「(菅波の腕の中に入ろうとすると)あ…(と躊躇)」

 菅波「え?」

 百音「いいんですか」

 菅波「いいと思いますよ、もう(2人は抱き合う)」

 百音「先生、本当にお疲れさまでした」

 人と容易に会えなくなったコロナ禍を映し出し、菅波の言葉「残念ながら僕らは、お互いの問題ではなく、全くの不可抗力で突然大事な人を失ってしまうという可能性をゼロにはできません。未来に対して、僕らは無力です。でもだから、せめて今、目の前にいるその人を最大限大事にする他に、恐怖に立ち向かう術はない」(第116話、10月25日)に「絆の力」が託された。

 百音の妹・未知(蒔田彩珠)は東京の大学へ進学。幼なじみ・亮(永瀬廉)は自分が買った船に乗り、海へ出た。百音と菅波も無事に再会。それぞれが痛みと向き合い、相手に寄り添いながら迎えた最終回となった。

 百音の父・耕治(内野聖陽)は、親友・新次(浅野忠信)の息子・亮の出航を敢えて見に行かず。「オレ、見んのが怖いんだよ。見たら、オレが救われてしまうんじゃないかって。おまえたちに何ができんだって思ってきたオレが、胸なで下ろしてしまうんじゃないかって。そんなもんじゃねぇだろ。そんな簡単じゃねぇだろ。だから、オレが見て泣くのは、もう少し先にしときたいんだよ」。復興はまだ終わっていない――。銀行をやめて家業のカキ養殖を継いだ耕治の、そんな決意とともに、希望あふれるフィナーレとなった。

 須崎CPは「本当に最後までギリギリ、延々と話し合いを重ねて、このラストにたどり着きました。特に最終週に新型コロナを盛り込むのか、盛り込まないのか。盛り込むとして、どういう描写にするのか。一番難しく、一番怖かった部分です。僕たちの中でも賛否両論があり、いろいろな意見を戦わせました。しかし、制作発表の時に『ヒロインが目指す気象予報士は“明るい未来を届ける仕事”です』と宣言してスタートした以上、今まさに起きていて、私たちの未来に大きな影響を与えるコロナについて、全く触れないでいて、いいわけがないだろうと思い至りました。そして、あのようなラストシーンで『近い将来、こうであってほしい』というメッセージを込めました。自分としての思いは揺るぎないつもりでしたが、視聴者の皆さんから絵空事とお叱りを受けるかもしれない。とても不安はありました。だから、視聴者の皆さんに概ね好意的に受け止めていただき、特に医療従事者の方々から『力をもらいました』『励みになりました』といった言葉を頂けた時は、本当にうれしかったです」と述懐した。

 ◆須崎 岳(すざき・たかし)1973年(昭48)生まれ、愛知県出身。98年、NHK入局、初任は大阪局。主なプロデュース作品に「透明なゆりかご」「サギデカ」「弟の夫」「運命に、似た恋」、連続テレビ小説「花子とアン」、「恐竜せんせい」「真珠湾からの帰還」など。主な演出作品に「鉄の骨」「散歩する侵略者」など。

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