お騒がせユーチューバー続出の背景 タレントとの“違い”は事務所との力関係

[ 2021年12月25日 05:30 ]

激動2021 芸能(3)

活動休止を発表する水溜まりボンドのトミー(水溜まりボンドの公式You Tubeチャンネルから)

 人気ユーチューバーの事件やスキャンダルが目立った一年だった。「ワタナベマホト」の名で活動していた男性は、未成年女性にわいせつ写真を送らせたとして児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で逮捕され、3月に引退を発表。6月には31人のユーチューバーが緊急事態宣言下で自粛破りの大パーティーを開いたことが報じられ、中心的な存在だった人気コンビ「水溜りボンド」のトミー(28)が活動を自粛した。

 ユーチューバーのほとんどは専門のプロダクションに所属している。スタッフらの監視の目があるはずなのに、なぜこうも愚行が相次ぐのか。大手ユーチューバー事務所の社長は「ユーチューバーと事務所の関係は明らかに事務所が下。一から育てたわけではなく、稼いでもらっている立場。タレントを育てるプロダクションであれば、時に社会人としての教育もするだろうが、こちらの提案に対して聞く耳を持たないユーチューバーもいる」と実情を明かす。

 ユーチューバーが事務所に入る主なメリットはマネジメントではなく「解析」だという。どんな動画が再生回数を稼ぐ傾向になるのかなどを事務所に解析してもらうことで、動画作りに役立てている。事務所はほかにメディア出演や広告契約などの窓口としての役割を担ってもいるが、所属ユーチューバーの身の回りをサポートすることはほとんどない。そのため、芸能プロとは違って、所属ユーチューバーへの言動について口出しすることも少なく、騒動やスキャンダルを起こした際にもスポンサーやメディアなどに積極的に対応することはない。全ての責任はユーチューバー本人に大きく委ねられる。

 チャンネル登録者数が200万人を超える男性ユーチューバーは「マホトさんの引退とトミーさんの活動休止には多くのユーチューバーがハッとさせられた2大事件だった」と話す。このユーチューバーは月収が1000万~2000万円。「2人とも自分以上に稼いでいたはずなのに一気に収入がなくなった。トミーさんに至っては犯罪を犯したわけでもないのに復帰まで半年もかかった。ユーチューバーの一寸先は闇。事務所もノーガードだし、稼げるようになったユーチューバーは2大事件を機にスキャンダルや炎上を極端に恐れるようになった」と説明する。

 新興ユーチューバー事務所の幹部によると、ギャラの取り分は全体を10とするとユーチューバーが8、事務所が2という割合が一般的だった。それでも「なんで解析しかしてくれない事務所に2割も取られないといけないのか」と文句を言われることがよくあるといい、最近は9対1や、それ以下にする事務所もあるという。

 今月16日には大手事務所「UUUM」が専属ユーチューバーを半減させると発表したばかり。過渡期を迎えたユーチューバーを取り巻く環境は大きく変化しており、不安も膨らんでいる。同幹部は「売れっ子ユーチューバーの中には自分を守ってもらおうと、芸能プロ入りを目指す動きが出てくるはずだ」と予測した。

 ≪芸能人転身も≫ユーチューバーの中には、1030万人の登録者数を持つHIKAKIN(32)やフワちゃん(28)らテレビ番組に出演するなど、タレント並みの知名度や人気を誇るケースもある。一方で、芸能人がYouTubeに主戦場を移す例も多くなってきている。“闇営業騒動”で吉本興業を退社した宮迫博之(51)は昨年1月にYouTubeチャンネルを開設した。また、お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の中田敦彦(39)は19年からテレビを離れ自身のYouTubeチャンネルを発信の場に。芸能生活50年の大御所女性タレントの上沼恵美子(66)も今月19日にチャンネルを開設し、YouTubeデビューを果たした。

 ≪行為は過激化“迷惑系”逮捕≫今年も迷惑系ユーチューバーが逮捕された。「よりひと」の名で活動する男は、中学生のユーチューバーが過去にいじめをしていたとする動画を配信。これを受け、10月に警視庁に名誉毀損(きそん)容疑で逮捕されたことを中学生ユーチューバーの所属事務所が報告した。昨年はへずまりゅう(30)がスーパーで商品の魚の切り身を会計前に食べたとして、窃盗容疑で逮捕された。いずれも人に迷惑をかける姿を映した動画で視聴回数を稼いだことで、よりその行為が過激化した。視聴者側にも「面白がって見ない」というリテラシーが求められている。

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