畠山鎮八段 「師弟制度は古い、いらない」否定派から一転、「残してもいいのかな」と変化した理由語る

[ 2021年10月20日 17:03 ]

畠山鎮八段
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 インターネットテレビ局「ABEMA」で12月中旬から配信される新番組「第1回ABEMA師弟トーナメント inspired by 佐藤康光」の収録が都内で行われ、畠山鎮八段(52)らが参加した。

 今大会の発案者で、日本将棋連盟会長の佐藤康光九段が「独特」と評する将棋界の師弟制度。プロ養成機関である奨励会を受験するためには棋士の推薦が必須となるが、その奨励会幹事を2001年から十余年に渡って務めた畠山自身は、長く師弟制度否定派だったという。

 「奨励会幹事時代、地方の才能のある子が『師匠探し』で苦しんでいるのを見ていたので、師弟制度は古いんじゃないか、いらないんじゃないかと思っていました。お笑いの世界とかは平成に入った頃に無くなっていましたよね。将棋界も今は師匠の教室に通ってどうこうという時代でもないので、無くてもいいのではないかという発言もしていました」

 その思いが変化したのは、なんと今月初旬。京都大学FCME(Foundation Course for Medical Education)「指導医のための医学教育学プログラム」のディスカッションに参加した時だったという。

 「医師の世界では外科なら外科、内科なら内科と分かれますよね。でも将棋界は師匠が居飛車でも弟子は振り飛車、ということもたくさんあります。師匠の技を伝承するのではなく、師匠と弟子が違う戦法で将棋に向かっていくことにすごく驚かれましたね。

 師匠が言ったことを弟子がすぐに『先生、それは違いますよ』と言えたり、盤上でもそれはありますよね。研究でも言い合える世界というものを新鮮に感じてくださったようです。そういう師弟関係は他にはないと。言われてみればすごい世界だなと思いました」

 北海道から沖縄まで、全国の医師とオンラインディスカッションを交わす中で、「医師の先生方が驚かれたり、そういう世界を認めてくださって、初めて残していてもいいのかなと思った」という。

 奨励会幹事時代の畠山は、熱血指導で現在の関西所属棋士の活躍の礎を築いたことで知られているが、自身の愛弟子たちとの接し方はやはり別物だったようだ。門下には前期名人戦挑戦者で順位戦A級に在籍するトップ棋士・斎藤慎太郎八段(28)と、新進気鋭の黒田尭之五段(25)を擁する。

 「棋士になれる才能はあると思っていても、プロになれるのは(全体の)2割あるかないか。例えば体を悪くして四段になれないこともあるし、棋士にならずに幸せな人生を送るかもしれない。

 でも10年、20年たった時に、棋士室で師匠と2人でいろんな戦法を指して楽しかったなって思ってもらえたらいいなと思っていました。充実した時間を作りたいなと思って、毎回毎回指していました」

 今では関西所属棋士を代表する2人の人気棋士を育て上げた畠山。

 「なんとか自分が50代になって、もうひと花、ふた花咲かせられれば、あれ?あの時の幹事、または師匠、頑張っているな、自分はまだまだだなと思ってもらえればなと思って。いろいろ頑張っています」

 第1回ABEMA師弟トーナメントでは、斎藤、黒田、どちらとペアを組むのか――。指名のゆくえにも注目したい。

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2021年10月20日のニュース