品川ヒロシ 最新監督作「リスタート」に込めた28歳の君、49歳の僕へのメッセージ

[ 2021年7月23日 16:00 ]

監督作「リスタート」が公開された品川ヒロシ監督
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 「ドロップ」「漫才ギャング」などを手掛け、映画監督としての評価も得てきたお笑いコンビ「品川庄司」の品川ヒロシ(49)。短編含め7本目となる最新監督作「リスタート」が7月16日に全国公開された。大阪市内でこのほど、スポニチ本紙の取材に応じた。

 客席で涙をぬぐう観客の姿に、品川監督は「作って良かった」と実感する。脚本も手掛けた同作。主人公・未央は高校卒業後に歌手を目指し上京したが、10年後の現実は売れない地下アイドルだ。婚約者がいるとも知らず交際していた有名歌手との密会現場をスクープされ、SNSで大炎上。夢にも恋にも破れて地元に戻った28歳の不器用な再出発を描き、感動を呼んでいる。

 品川は「28歳」へのこだわりがある。「30歳で売れなかったら辞めよう、と1回悩む時期。これってあるあるだと思うんですよ。ミュージシャンもアイドルも、役者も芸人も」。主演を務めたフォークデュオ「HONEBONE」のボーカル・EMILYが、隣で「ある!ある!」と共感した。

 品川自身も28歳当時はギリギリの精神状態だったという。「劇場の支配人が書いた、後輩芸人・ハローバイバイを売り出そうとする“ペラ1”の企画書見ただけで『クソッ!もう吉本辞める!』って大げさに騒いでね。観客アンケートで一番になったら吉本が売り出してくれると聞いてて、『俺らが1位になったのにだまされた!約束が違う』って激高してた。便器に向かってチクショー!って叫んだり」と苦笑いで回想。「(先輩コンビ)ダイノジ、相方の庄司から『まあ落ち着け』と止められて。激情型で、28歳は喜怒哀楽がとにかく凄かった」という。

 劇中、主人公に幼なじみが言う「28歳ぐらいで人生終わったみたいな顔すんな」というセリフ。「人は結構、28~32歳ごろに劇的に変ぼうを遂げる。20代で周囲にイタいと言われてた部分が、30代で魅力的な個性になったり。20代では否定され、たたかれた事が、実は自分の一番の武器だったするんですよ」。だから自分を諦めるな。アラサーの光と影を知る監督から、悩める28歳への激励が込められた言葉だった。

 理解されない苦さと悔しさを味わいながらも、家族や仲間の支えの中で立ち上がろうとする主人公の姿は「今の自分にも刺さるんですよね」と語る。「49歳ぐらいで人生終わったような顔すんな」と、自らをも奮い立たせる作品となった。

 他にも同作には耳に残るセリフが満載。28歳だけではない。どの年代にも響く品川流の熱いエールが感じ取れる。

 ◆「リスタート」 北海道・下川町と吉本興業によるプロジェクトで、2019年6~9月にクラウドファンディングで資金を集め、製作された映画。EMILYが演技初挑戦にして主演、DOBERMAN INFINITYのSWAY、中野英雄らが出演する。また、自らの意思でクラウドファンディングに参加し出演を熱望したブラックマヨネーズ・小杉竜一、キングコング・西野亮廣、相方の庄司智春らも登場。映画人の情熱や愛情、友情が結集した作品で、品川はクランクアップで初めて涙。初日あいさつでも号泣した。

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