「おかえりモネ」西島秀俊は「切り札」百音を導くメンター朝岡 元ビジネスマンの“裏設定”柔軟さに磨き

[ 2021年5月28日 08:15 ]

連続テレビ小説「おかえりモネ」で人気気象キャスター・朝岡覚役を演じ、ドラマ序盤を牽引した西島秀俊(C)NHK
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 俳優の西島秀俊(50)が今月17日にスタートしたNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)第1~2週で絶大な存在感を示し、序盤を牽引した。人気気象キャスター・朝岡覚役で、女優の清原果耶(19)演じるヒロイン・百音を気象予報士の道へ導くメンター的存在。2013年の大河ドラマ「八重の桜」でも西島とタッグを組んだ今作のチーフ演出・一木正恵監督は「“切り札”に登場いただきました」と最重要キャラクターを託した。西島の魅力や撮影の舞台裏を一木監督に聞いた。

 朝ドラ通算104作目。清原とタッグを組んだNHK「透明なゆりかご」やテレビ東京「きのう何食べた?」などで知られる安達奈緒子氏が手掛けるオリジナル作品。朝ドラ脚本初挑戦となった。タイトルにある「モネ」は主人公・永浦百音(ももね)の愛称。1995年に宮城県気仙沼市に生まれ、森の町・登米(とめ)で青春を送るヒロイン・百音が気象予報士の資格を取得し、上京。積み重ねた経験や身につけた技術を生かし、故郷の役に立ちたいと奮闘する姿を描く。

 西島は16年前期「とと姉ちゃん」以来、5年ぶりの朝ドラ出演。今回演じるのは、東京の民間気象予報会社「weather experts」に所属する気象予報士・朝岡覚(さとる)。テレビの気象キャスターも務め、人気を誇る。漫画家・石ノ森章太郎の大ファンで、原画展を見に登米を訪れ、百音と“運命の出会い”を果たした。滞在中、能舞台の前に雨がやむと的中。百音に「気象予報は未来が分かる世界」と教えた。

 その後、百音が林間学校の小学生を山に引率した際、雷雨に襲われた百音と圭輔君(阿久津慶人)を東京から“リモート救出”(第9話、27日)。百音は「気象予報が命を守ることもある」と身をもって知り、気象予報士の試験本に手を取るきっかけをつくった。

 百音の“人生の師匠”となる朝岡役を誰が演じるか。脚本の安達氏にとってもテレ東「きのう何食べた?」で“シロさん”こと筧史朗役を演じた西島は“盟友”の1人。一木監督も大河「八重の桜」で1年以上にわたって苦楽を共にした。

 西島は主人公・八重(綾瀬はるか)の兄・山本覚馬役。会津藩の武士から、失明と歩行困難の身になりながらも明治維新後の京都府顧問や初代議長、同志社大学臨時総長と最後まで出演し、その生涯を体現した。

 一木監督は1993年入局。朝ドラに携わるのは5作目で、チーフ演出は今回が初となり「『八重の桜』という作品を一緒に作り上げた西島さんとの時間はかけがえのないもの。今回、百音を導く圧倒的なメンター・朝岡をどなたに演じていただくか。脚本の安達さんも非常に信頼されていますし、私の中でも西島さんしかいませんでした。ここぞという時の“切り札”に登場いただきました。『八重の桜』同様、東北に寄り添うことを使命とするこのドラマならば、きっと参加してくださるのではという予感もありました」と明かした。

 西島は期待通り第1~2週を牽引し、圧倒的な存在感を発揮。“ドラマ外”でも大きな話題を呼んだ。

 第2話終わりの18日の「あさイチ」(月~金曜前8・15)の“朝ドラ受け”で、博多大吉(50)が「西島さんが気象予報士というのは、まだ受け止められていません。映るたびに『ウソだ』と。『潜入捜査中かしら?』と。徐々に慣れていきたいと思います」と笑いを誘うと、SNS上にも同感の視聴者が続出。西島が警視庁公安部の倉木警部を演じたTBS「MOZU」になぞらえ、ハッシュタグ「#おかえりMOZU」も出現したほどだった。

 翌19日には、大吉が「あれらしいですね。西島さんから連絡が来たらしいですね」と相方に水を向けると、博多華丸(50)は「共通の知人を介して連絡が来まして…」「僕は潜入捜査官じゃないよ」(大吉)と明かし、スタジオは爆笑。華丸は「でも、それを言うってことは、ますます潜入捜査官」と続け、笑いを増幅。最近は「おはよう日本」の“朝ドラ送り”→本放送→「あさイチ」の“朝ドラ受け”までがセットの視聴となり、一木監督は「本当にありがたく、いつも感謝しています」と喜び。「自ら『あさイチ』側にコンタクトを取ってくる西島さんも凄いと思いました。(朝ドラ受けの)影響力を分かって楽しんでくださったんじゃないでしょうか」と推し量った。

 朝岡というキャラクターには、元ビジネスマンの“裏設定”がある。「朝岡は気象畑だけを歩いてきたわけじゃなく、気象によって何を得られるかという視点を持った人物。(元ビジネスマンの)朝岡がどのような口調なのか、どういうふうに人と接するのか。西島さんは裏設定を汲み取って朝岡の人物像を作り上げていらっしゃいます」。ビジネスは気象に左右されることもあり、時に密接な関係に。百音と圭輔君を“リモート救出”した際のスピード感や手際の良さに“元ビジネスマン感”が表れた。

 「八重の桜」以降、さらにキャリアを積み重ねた西島について、一木監督は「シリアスでもコメディーでも何気ない日常でも、どのようなシチュエーションでも動きでも、自分のものにされてしまう柔軟性に一層、磨きがかかったと思います。もちろん前からですが、本当にカッコいい!どんなことをしても失われない品格に、惚れ惚れしました」と称賛した。

 例えば、第3話(19日)の冒頭。森林組合を訪れた朝岡を、地元住民の女性らと同じく石ノ森章太郎ファンの古参職員・川久保(でんでん)が引っ張り合って取り合いに。そこに大山主・サヤカ(夏木マリ)が現れる。

 台本上はサヤカが普通に登場するシーンだったが、一木監督は「私が空間的に大きく展開するのが好きなタイプなんです。例えば、ある2人が目の前で話をしていても、1人が部屋の隅に置き忘れたスマートフォンを取りに行くとか、ある必然性の下に遠ざかって、声を張って話を続けたり。あるいは、近づいたり。そういう動きがあると、お芝居に新しいエネルギーが生まれるんです。空間のステージングの仕方一つで、キャストの皆さんの演技も変わってくるので、その部分は演出として強く意識しています。西島さんは、こちらの提案に対し『やってみます』と寄り添いながら、ご自身の中で咀嚼して演じてくださる。ワイワイした賑やかな雰囲気を出したかった3話のところをはじめ、以前にも増して軽やかな西島さんのご対応に、いつも助けられています」と感謝し、全幅の信頼。朝岡の物腰の柔らかさが、そのまま西島に重なった。今後、朝岡が百音にどのような影響を与えるのか、大いに注目される。

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