殺ばつとした今だからこそ見たい1本!

[ 2021年4月13日 17:30 ]

密を避けるため衝立付きで行われた「瞽女 GOZE」のトークショー。吉本実憂と子役の川北のん
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】新型コロナウイルス感染症は収まる気配を見せないどころか、変異種が猛威をふるい、第4波到来の気配だ。

 昨年後半に「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」というメガヒット作を出した映画界も、年が明けてからは苦しい状況が続く。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の健闘はあるが、「鬼滅の刃」が4月12日現在でまだ4位に付けているほどだ。

 それでも、公開できる作品は幸せ。完成させても機会に恵まれず、劇場での上映を断念する映画も少なくないと聞く。今回、当コラムでは、そんな中でコツコツと地道に全国を“巡映”している瀧澤正治監督(71)の「瞽女 GOZE」にスポットを当てる。昨年8月8日に物語の舞台になった新潟県の映画館で先行公開された後、順次興行を全国に拡大。67カ所での上映を予定している

 篠田正浩監督(90)に「はなれ瞽女おりん」(1977年公開)という名作があったが、瞽女とは、三味線を弾き唄いながら門付け巡業した盲目の女旅芸人のこと。映画「瞽女 GOZE」は“最後の瞽女”といわれ、2005年に105歳で死去した小林ハルさんの生涯を描いた。

 新潟県三条市に生まれたハルさんは、生後3カ月で失明し、2歳で父親と死別。7歳で(5歳説も)瞽女の親方に弟子入りした。劇場版「名探偵コナン」のエンディング映像を1997年公開の第1作から23年の間、製作・演出してきた瀧澤監督がハルさんの存在を知ったのは2003年1月に放送されたテレビのドキュメンタリー番組だったという。

 ハルさんが残した「良い人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」という言葉にひかれ、さまざまな困難を乗り越えて1978年に国の無形文化財保持者に認定された、その生きざまに感動。17年の構想を実らせて映画化にこぎつけた。物語は盲目の娘が1人でも生きていけるように心を鬼にして瞽女に育てた母親の慈愛と娘の成長に軸を置いて、丹念につづった。

 4月3日から目黒区の東京写真美術館ホールでの上映が始まり、ハルさん役で主演した吉本実憂(24)と、幼少時代を演じた川北のん(12)がトークショーに登場した。吉本はハルさんの最後の弟子だった萱森直子さんから1カ月半にわたって三味線や瞽女唄を学び、その甲斐あって“吹き替え無し”で乗り切った。

 「小学生の時に4カ月ほど三味線を習ったことがありましたが、バチの持ち方くらいしか覚えてませんでした」と苦笑しながら、「何より難しかったのは瞽女唄。ハルさんの声を聞いて鳥肌が立ちました。あの深みは出ない。1カ月くらい特訓を重ねました」

 続けて「幼少期のハルさん(川北)からバトンを受ける形でしたので、幼少期の出来事も体に刻まなきゃいけなかった。ですから出番が無い時でも、(川北の撮影を見に)現場に通いました」と振り返り、「人生の一部しか演じていませんが、それでもそこに壮絶な生きざまがにじみ出ていると思います。貫かれているのは愛です。多くの方の心に届けばうれしい」と力強く語った。この演技で吉本は日本映画批評家協会から新人賞を贈られた。

 4月から中学生になった子役の川北は小学校の卒業式に来た着物姿で登壇。「1回しか着てなかったので、せっかくだから着てきました」とりりしい姿。体を張った演技が見事だったが、「新潟の雪は冷たいんじゃなくて痛いんです。凍りそうでした。でもハルさんは実際に厳しい修行をやってきた。自分も頑張ろうと思いました」

 誠実な仕事ぶりに定評がある瀧澤監督のもとに豪華なキャストがそろい、吉本と川北を盛り立てた。語り部の奈良岡朋子(91)や渡辺美佐子(88)、左時枝(73)、中島ひろ子(50)、小林綾子(48)、本田博太郎(70)らそうそうたる実力派の中には、昨年12月30日に75歳で永眠した綿引勝彦さんの名前も。ハルの祖父役を存在感たっぷりに演じた。

 心温まる一編。こういう良心的な作品が細々でも上映されるのは意義深い。瀧澤監督は「福島県只見町で120人くらいの中学生にも見てもらいましたが、“私をしかるお母さんの気持ちが分かるようになりました”とか“瞽女さんの生き方に感動しました”と生徒さんが素直に感想を書いてくれました」と感激。「字幕と副音声付きのソフトを作るなど、視覚や聴覚に障害のある方にも見てもらえるようにいろいろ工夫しています」とこれからの巡業もしっかりと見据えている。エンディングには本物のハルさんの瞽女唄も流れ、記録としても貴重な作品になっている。

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