草なぎ剛が描く被災地との“新しい地図”、役作り通し薄れていた意識を自戒

[ 2021年3月4日 05:30 ]

東日本大震災から10年――忘れない そして未来へ(4)

被災地への思いを語る草なぎ剛
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 被災地に思いをはせる人たちが「3・11」とその後の10年を振り返りながら、被災地にエールを送るインタビュー企画「忘れない そして未来へ」。第4回はSMAP時代から義援金を呼び掛け、何度も東北を訪れている俳優の草なぎ剛(46)。震災をテーマにした主演ドラマも完成、思いを語ってくれました。

 10年前の「あの日」。ドラマの撮影で東京から埼玉方面へ車で移動していた。地面のうねりを感じ、高速道路で緊急停車。急ぎニュースを確認し言葉を失った。

 「波が高くなって、街がのまれていく。こんなことが本当に起きるのかと…。現実として受け止められない映像を見て恐怖を感じました」

 3日後の14日にはフジテレビ「SMAP×SMAP」の放送が控えていたが急きょ中止。「毎日、ニュースを見るしかできなくて翻弄(ほんろう)されていました。メンバーやスタッフたちと、自分たちにできることは何かないかと話し合いを重ねました」

 その結果、表舞台から勇気を届けると決めた。翌週の21日、番組は緊急生放送され「いま私たちに何ができるのか」をテーマにメンバーで語り合った。当時「バラエティーは自粛すべき」との風潮があったが「その時にできることを考えて、ベストな選択ができたと今では思います」と回想する。

 番組では毎回放送内で募金を呼び掛け、夏にはフジテレビ「27時間テレビ」の企画で福島県を訪問。以降、幾度となく現地に足を運び歌でも勇気を届けてきた。「こちらがお邪魔しているのに感謝していただいた。被災者の方たちのことを気にかけるというのが大切だと感じました」

 あれから10年。「新しい地図」として活動する今も変わらず3・11は大切な日だ。ただ「少し意識が離れていたかなと気がついて、反省している部分はあります」と自戒を込めて語る。昨年12月、震災をテーマにしたNHK・BSプレミアムの主演ドラマ「ペペロンチーノ」(6日後10・30)の撮影で約1年10カ月ぶりに宮城県を訪問。その時に感じた率直な思いだった。

 演じた役柄は、被災で自暴自棄になりながらも新たな一歩を踏み出すイタリア料理店のオーナーシェフ。「人がどう傷ついたのか。前を向いて生きるにはどうすればいいか」。震災直後に触れ合った人たちに思いをはせながら役作りをした。

 撮影の合間にはロケ場所を提供してくれた現地の人たちと交流。「カキを焼いてくれたり(名産の)ドンコ汁を作ってくれたり」。東北の温かな空気が懐かしかった。

 震災をテーマにした作品に初めて向き合い、改めて当時の思いを見つめ直すことができた。「被災されている方と東京にいる僕とは違う。だからこそ、被災した皆さんのことを常に意識をしないと、自然と心の距離も出てしまう」。これからも東北に夢を思いを届け続ける。(吉澤 塁)

 ◆草なぎ 剛(くさなぎ・つよし)1974年(昭49)7月9日生まれ、埼玉県出身の46歳。88年にSMAPを結成し、91年に「Can’t Stop!!―LOVING―」でCDデビュー。97年の初主演ドラマ「いいひと。」(フジテレビ)が好評を博し俳優としての人気を確立。20年の映画「ミッドナイトスワン」でブルーリボン賞主演男優賞を受賞。同年末に一般女性と結婚した。血液型A。

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