王将戦開幕!攻めの渡辺に受けの永瀬、超ハイペース 早くも終盤の様相

[ 2021年1月11日 05:30 ]

スポニチ主催第70期王将戦7番勝負第1局第1日 ( 2021年1月10日    静岡県掛川市・掛川城二の丸茶室 )

<第70期王将戦第1局第1日>ライトアップされた掛川城。渡辺明王将(右)と永瀬拓矢王座(撮影・西尾 大助)
Photo By スポニチ

 渡辺明王将(36)=名人、棋王との3冠=に永瀬拓矢王座(28)が初挑戦する節目の第70期が開幕した。前例豊富な角換わり腰掛け銀戦型となり、午前中からハイペースの進行。駒がぶつかり合って激戦ムードが高まる中、77手目を渡辺王将が封じて指し掛けとなった。第2日は11日午前9時に再開する。

 第1日の指了図には、とても思えない。

 角銀交換で渡辺側に大駒が3枚。代償に多数の歩を放出した。対する永瀬の王は5三の位置でほぼ露出状態。すでに終盤の入り口だ。「前例もなくなって、午後は一手一手が凄く難しかった…です」と振り返る渡辺。初の2日制で前半を終えた永瀬は「1日を無事に終えてよかった」と胸をなで下ろした。

 封じ手直前まで76手。過去5年の第1日平均指し手が49・2だから尋常ではない。7番勝負の初戦に限れば同期間で55手が最多だ。互いに距離感を見計らう意図が重なると、自然と牛歩の展開になる。だが先手を得た渡辺が選択した戦型は前例が星の数ほどある角換わり腰掛け銀。午前中は早指し戦と見まがうほどパタパタと手が進む。渡辺の41手目で4五に右桂が跳ね、午前11時を前にして早くも開戦だ。

 アクセントがあったのは昼食休憩を挟み64分を投じた永瀬の54手目△4五同歩(第1図)だ。「第1日午前の3時間半は初めてなんです。どんな感じなのか慣れていかないと」と永瀬。初の2日制とあり無理筋を探るリスクを避けたのだろう。

 3連覇を狙う上座の渡辺は、意外に「防衛戦で苦戦する」という意識を持つ。過去の防衛戦を振り返ると第63期(14年)は羽生善治3冠を4勝3敗で振り切ったものの、第64期(15年)は郷田真隆九段にフルセットで失冠。記憶に新しい昨期も初挑戦の広瀬章人八段に4勝3敗と苦しんだ末の連覇だった。酸いも甘いもかみ分ける渡辺の身には防衛の難しさが嫌というほど刻まれている。

 7番勝負初挑戦の永瀬は、通常の対局同様ダークスーツ姿だ。かつてはタイトル戦で和服を着用したものの、着崩れが気になりどうしても集中力を欠く。昨年の叡王戦では開局時の和装から休憩時に背広へ着替えたこともある。「(対局時の)メリットを感じないから」とも言う現実主義者。過去には加藤一二三・九段や島朗九段が洋装で自己流を貫いた。対戦相手や関係者には事前打診をしている。決して奇をてらっているわけではない。

 「あした(11日)は変化によってはすぐ終盤戦でしょうね」と話して対局場を後にした渡辺。そして永瀬は「持ち時間は両者減ってのスタート。どうなるか全然分からないです」と含みを残す。それぞれの思惑がぶつかるオープナーで、決着の形は全く予想が付かない。

 ≪封じ手は?≫▼正立会・森内俊之九段 ▲7二角。飛車を追いながら後手王を包囲。敵王近くに成駒を作りプレッシャーをかける
 ▼副立会・神谷広志八段 ▲2六角ではないか。敵王の近くに馬を作る狙い。とりあえず王手を先にかけてしまう作戦
 ▼記録係・伊藤匠四段 難しいが▲5七桂だと予想する。拠点となりそうな△6五歩を狙うため。今後優位に進める狙い

続きを表示

この記事のフォト

2021年1月11日のニュース