朝ドラ「エール」古川琴音(上) 感覚派で理論派の素顔

[ 2020年11月18日 08:15 ]

NHK連続テレビ小説「エール」で看護師の華を演じる古川琴音(右)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「エール」で主人公(窪田正孝)とヒロイン(二階堂ふみ)の娘・華を演じる女優・古川琴音(24)に話を聞いた。

 繊細な芝居をする人だ。例えば、今月2日に放送された第101回。華が台所で鍋の底の汚れを取っていると、歌唱練習から帰宅した母に「あとはお母さんがやるから。大丈夫だよ」と止められる。何か言って反発するわけでもなく、いらだちや怒りを顔ににじませるわけでもなく、ただ視線を泳がせて何度か瞬きする。ごくわずかな表現だ。しかし、それだけで、せっかく家事を手伝ったのに喜んでもらえない複雑な思いが、しっかりと伝わってきた。

 「あまり気持ちを外に出そうとしていないです。例えば気持ちがモヤモヤしていると、体はそのように変わる。その感覚をじっと感じるようにしています」

 独特の演技法だ。ひとつひとつのシーンを撮影する前、そこに置かれる華の立場や思いは十分に考えて臨むが、それをどう表現するかは事前には考えない。実際に現場に入って自分が動いたり共演者の動きを感じたりして初めて表現が定まるという。

 「やってみないと、どうなるか分からないです。相手の役者の入り方や声色、にじみ出る感情などにすごく影響されながら気持ちが動いていってると感じます」。感覚派とも言える演技だ。

 このドラマに初めて出演した時の華の年齢は15歳。自身からみれば9歳も下だった。一歩間違えば痛々しさが生じかねないところだが、見ていて全く違和感がなかった。

 「15歳ということは考えず、どう反応すればいいかということを考えました。分かりやすいのは恋愛の時の反応です。華は恋愛が初めてで、好きな相手と面と向かった時、アピールできる子なのか、それとも、恥ずかしがって一歩引く子なのか…。15歳だからではなく、華のような子ならどうするかを考えて作りました」

 15歳の少女を、自身の15歳時の心境を思い出して演じるのではなく、物語で描かれている性格や経験から考察して演じる。感覚派のようでありながら理論派のようでもある。

 「華は根本が似ているので、入りやすかったです。まじめなところがすごく似てる。こういうインタビューも、事前に答えを考えておかないと不安だから、マネジャーさんに頼んで、どんな質問が来そうか教えてもらってます。もっと気軽に話せたらいいと分かってるんですけど、予期しない質問を受けるとパニックになっちゃうんです」とほほえんだ。

 理論派のようでありながら時にのぞかせる素顔が柔らかで愛らしい。そんな魅力も役柄によく反映されている。(つづく)

 ◇古川琴音(ふるかわ・ことね)1996年(平8)10月25日生まれ、神奈川県出身の24歳。2017年、女優・満島ひかりの主演映画に感銘を受けて芸能界入り。18年、映画「春」に主演。19年、映画「十二人の死にたい子供たち」の主要人物の1人を演じて注目される。今年10月からTBS系のドラマ「この恋あたためますか」に出演中。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。 

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