大河「麒麟がくる」 明智光秀の背中を押した伊呂波太夫

[ 2020年10月5日 12:30 ]

4日放送のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で、今後について話す(左から)伊呂波太夫(尾野真千子)と明智光秀(長谷川博己)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】4日放送のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で、旅芸人一座の座長の伊呂波太夫(尾野真千子)が歴史を動かす役割を果たした。

 将軍を中心とした武家政権の復活が明智光秀(長谷川博己)の悲願。今後の焦点は将軍候補の足利義昭(滝藤賢一)をいつどのように上洛(じょうらく)させるかだ。

 迷う光秀に伊呂波太夫は朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)について「幕府、将軍を支えるご器量はない」と断言。その上で「上洛を首尾よく進めてお行きになれるのは明智さまなのではありませぬか。そろそろ船出の潮時なのではありませぬか」と行動を促す。

 光秀が「あいにく船出の船が見つかりませぬ」と漏らすと、伊呂波は「その船の名はすでにお分かりのはず」と織田信長(染谷将太)を指名。「お二人で上洛すればいいのですよ。上杉さまも朝倉さまも不要ではありませぬか」と助言する。

 これを受けて光秀は信長と会い、単独で上洛することを進言。信長は「そなたの申す通りやってみよう」と同意し、伊呂波の助言が歴史を動かす形となった。

 一連の場面に関して制作統括の落合将チーフ・プロデューサーは「この時点で伊呂波の炯眼(けいがん)は、世の中を動かすのに最適な人間を見抜き、それは光秀であると本人に伝えた。時を動かすにはタイミングが大事なことも見抜いていて、越前の一介の牢人にすぎない光秀の背中を押した。光秀も立場的に、思い切りがないと動けないし、命がけの賭けに出ることをちゅうちょしていたと思う」と説明する。

 伊呂波は、ヒロインの駒(門脇麦)や医者の望月東庵(堺正章)らと同じ架空の人物。かねて落合氏は大河における架空の人物について「われわれ庶民の分身で、武家ばかり出てくる中に『現代人』の目線を持ち込むことができる」と、その役割を説明していたが、今後も駒や伊呂波が光秀の重要な決断に関わってゆくのだろうか。

 落合氏は「光秀の決断は、多くの人間が関わることなので、駒や伊呂波に限ったものではない。ただ、彼らは武士ではなく庶民なので、すべての民にとっての穏やかな世を作りたい光秀の行動原理には今後も作用してくると思う」と話す。物語のクライマックスである本能寺の変への動きに、駒や伊呂波の考えがどう影響するのか、注目される。

 4日の放送で、もうひとつ興味深かったのは光秀と細川藤孝(眞島秀和)が話す場面。自分の子が6歳になることを明かした藤孝に光秀は「たまも、今年、6歳だな」と自分の娘を振り返る。藤孝の子の忠興とたまは、のちに結婚し、たまはキリシタンとして細川ガラシャとなる。

 落合氏は「藤孝は光秀の盟友として描いているので、子供2人の婚姻も含めて、丁寧に描いていく予定」と明かす。細川ガラシャは過去の大河で、鈴木京香(2000年の「葵 徳川三代」)や長谷川京子(06年の「功名が辻」)らが演じたが、さて、今回は…?

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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