草なぎ剛 トランスジェンダー役で新境地「役は神様がくれるもの だからこそ自分にしかできないことを」

[ 2020年8月30日 05:30 ]

ポーズを決める草なぎ剛(撮影・沢田 明徳)
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 草なぎ剛(46)の俳優活動から目が離せない。初めてトランスジェンダー役に挑んだ映画「ミッドナイトスワン」の公開が来月25日に控え、来年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」では、物語に大きく関わる徳川最後の将軍・徳川慶喜役が決定している。ジャニーズ事務所を独立してから3年。役者人生の大きな転機を迎え「新たな勝負。一本一本を渾身(こんしん)の力でやっています」と真摯(しんし)に向き合っている。

 「いつもその時々で取り組んでいる作品が代表作であり集大成だと思っているんです。でもそれにしても今回の作品は、とても大きな挑戦で、思い入れある作品です」

 そう語るのは、9月25日から全国公開される主演映画「ミッドナイトスワン」。男性の体を持ちながらも“女性”として生きる主人公が、育児放棄に遭った少女と共同生活を送る中で、次第に“母性”に目覚めていく。自身初のトランスジェンダー役で、俳優としての新境地に挑んだ。

 歩き方やタバコを吸うしぐさなど、そこには女性らしい所作が見てとれる。その一方で世間からぶつけられる目線や、自身のジェンダーと向き合う感情を、細かな表情一つ一つに込めて演じている。

 俳優人生の中でも経験のない難役。「コントとかコンサートとか、これまでの活動も今回の役柄に生きています。僕の中からじんわり、じんわりと…。ジュワッ!と出てくるものがありましたね」と迫力ある演技とは正反対の軽やかな口調で語った。

 豊富な経験があるからだろう。大きな挑戦でもありのままに向き合うことができる。「犬を飼っているおかげで僕の中に母性に似たような感情もありました。“クルミ”に感謝です」。3年前から飼っている愛犬フレンチブルドッグのサポートがあったことも笑顔で語った。

 「SMAP」としてCDデビューしてから約29年、トップアイドルとして駆け抜けてきた。国民的スーパースターという圧倒的な存在でファンの前に登場していたが、俳優業になると一変。演じるのは日常を生きる市井の人間、身も心もすさんだ暴力的な人間などだ。自然体でさまざまな役に向かい合うことができる草なぎの演技に対する評価は高い。故つかこうへいさんや、三谷幸喜氏(59)など、一流の演劇人からも絶賛の声が上がっている。

 「役というのは神様がくれるもの。それは運命的で、だからこそ常に自分にしかできないことを心がけたい」。どんな役にも真摯に向き合う姿勢は変わらないが、ここ数年は環境も変わり俳優業に対する意識の変化も感じているようだ。

 17年にジャニーズ事務所を退所し、稲垣吾郎(46)、香取慎吾(43)とともに「新しい地図」としての活動をスタート。「独立してからは一本、一本の大事さをかみしめています。グループでいた時には、他のメンバーがクッションになってくれたりすることもあるのですが、今はそういうわけにいかない。責任も大きくなりましたね」

 インタビューは稲垣がプロデュースする東京・銀座のカフェ「J_O CAFE」で行われた。「(メニューの)“ホットブルドッグ”は僕が命名したんですよ!」と楽しそうに語る。「吾郎ちゃんはこうしてお店をプロデュースしたり、慎吾ちゃんも個展を開いたりしていてやっぱり2人の活動に刺激は受けますよね。僕は何もやるものがないんですよ…」と冗談めかす。

 だが来年には、自身の新たな代表作となるNHK大河ドラマ「青天を衝け」もスタート。撮影はこれからだが、乗馬の練習を積むなど着々と準備を進めている最中だ。

 退所後初となる連続ドラマ出演。「以前までは当たり前のようにテレビドラマに出ていたんですが、人間って離れて戻ってくると凄く新鮮なんですよね。良くも悪くも緊張するし、プレッシャーを役のエネルギーに変えたいです」

 40歳を過ぎ、俳優として新たなステージへ。「俳優でいれば、歴史上の人物にも、シカゴのギャングにでも何にでもなれる。絶対に経験できないはずのものを経験できるので、ロマンがある。だからこそ楽しい」

 全ての経験は演じる上での糧となる。“俳優”草なぎ剛はこれからも輝き続ける。

 ◆草なぎ 剛(くさなぎ・つよし)1974年(昭49)7月9日生まれ、埼玉県出身の46歳。88年にSMAPを結成し、91年に「Can’t Stop!!―LOVING―」でCDデビュー。97年の初主演ドラマ「いいひと。」(フジテレビ)が好評を博し、俳優としての人気を確立。17年にジャニーズ事務所を退所し「新しい地図」として活動。昨年には初のソロライブを行った。趣味はジーンズ集め。血液型A。


 《“子供役”服部樹咲が「引っ張ってくれた」》映画「ミッドナイトスワン」(監督内田英治)は、一人の女性として生きる主人公・凪沙(草なぎ)が、親から虐待されて生きてきた少女・一果と出会い、“親子愛”を育んでいく物語。一果を演じる服部樹咲(14)は、今作で女優デビュー。草なぎは「樹咲ちゃんが僕を引っ張ってくれて、フラットな演技をすることができました」と共演を振り返った。「ぜひ“#草なぎ剛の代表作”でSNSで拡散してほしい」と呼び掛けている。9月25日の全国公開に先立ち、同10日にはTOHOシネマズ全国64館で先行上映が行われる。

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