藤井棋聖 最年少2冠王手!ひふみん超え八段昇段へ無傷3連勝 また昭和戦法「雀刺し」試みも

[ 2020年8月6日 05:30 ]

将棋の第61期王位戦7番勝負第3局第2日の対局を終えた藤井聡太棋聖(日本将棋連盟提供)
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 挑戦者の藤井聡太棋聖(18)が無傷3連勝で、2つ目のタイトル奪取に王手をかけた。5日に神戸市北区の中の坊瑞苑(ずいえん)で行われた第61期王位戦7番勝負第3局の2日目、防衛を目指す木村一基王位(47)との激しい戦いを制して149手で勝利。19、20両日に福岡市の大濠公園能楽堂で行われる第4局で、羽生善治九段(49)が持つ最年少2冠(21歳11カ月)の大幅更新に挑む。

 恐るべき強さだ。自王の守りは鉄壁。ならば、あとは攻めるだけとばかりに、金銀各2枚で囲われた堅固な木村王の守りを一枚また一枚と剥がしていく。

 持ち時間残り2分となった終盤、焦りがあったのか。「少し誤算があった」という悪手を指してしまい一瞬、ABEMA将棋チャンネルのAI評価値で逆転される場面もあったが、ひやっとさせたのはここだけ。最後は立て直し、冷静に寄せ切った。

 この日は香車と飛車が縦に並び、角が斜めに利いて、1筋の同じポイントを攻める昭和に流行した攻め戦法「雀(すずめ)刺し」を試みようとする場面も見られた。前日には昭和の守り戦法「土居矢倉」を繰り出しており、2日続けての心憎い“演出”に、ネット中継を見守るファンからは「出るか!雀刺し」と言葉が飛んでいた。

 ハードスケジュールの中、今年度も難敵と数多く相まみえながら勝ち続けている。ここまで21戦で18勝(未放送のテレビ対局を除く)と2位に5勝以上の差をつけて勝数ランキング独走中。また、王位戦では過去60期の7番勝負で最初に3連勝した16人中15人がタイトル防衛または奪取しており、ここから導き出される確率は・9375。データも2冠誕生を後押ししている。

 第4局は、2つの最年少記録を懸けた戦いでもある。先月19日に18歳の誕生日を迎えたばかりだが、次局で勝てば羽生が1992年に2冠を獲得した21歳11カ月を大幅に更新。また、同時にタイトル2期保持となり、昇段規定にのっとって八段昇段も決まれば、加藤一二三・九段(80)が保持している18歳3カ月の数字も上回る。

 終局後「これまでの内容を反省しつつ、しっかりした将棋を指せるようにしたい」と語ったように、次局へ向けて気の緩みもない。対局の地となる福岡では夏の風物詩・博多祇園山笠が新型コロナ感染拡大防止のため戦後初めて中止となったが、藤井の“新記録祭り”が実現すれば、お祭り好きな地元・博多っ子も盛り上がるはずだ。(窪田 信)

 ▽雀刺し 将棋の攻める戦法の一つ。先手番なら1筋に飛び道具と呼ばれる飛車・角・香などを集中させ、一点突破を狙うもの。破壊力はある一方で攻撃を1点に集中させるため、自陣がおろそかになるとされる。

 《福岡成績は両者明暗》第4局の行われる福岡市の大濠公園能楽堂では昨年8月、前期王位戦7番勝負第3局が実施された。当時、挑戦者だった木村は冠保持者の豊島将之竜王・名人に連敗して迎え、この会場での一戦で反撃ののろしとなる初勝利を挙げて最終的に4勝3敗での逆転タイトル奪取につなげた。一方の藤井は昨年8月に福岡市内で行われたJTプロ杯1回戦で三浦弘行九段と対戦し、公式戦で初めて和服姿で登場したが黒星を喫していた。

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