「金曜夜8時」のBS朝日「ワールドプロレスリングリターンズ」の魅力とは?

[ 2020年4月24日 14:45 ]

BS朝日「ワールドプロレスリングリターンズ」のイメージカット
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 【牧 元一の孤人焦点】「金曜夜8時」という言葉に特別な思い入れがある。かつてプロレスがテレビの地上波のゴールデンタイムに放送されていた時代があり、その時間帯にアントニオ猪木らの熱い戦いに胸を躍らせていたからだ。

 今月からBS朝日が毎週金曜午後8時に「ワールドプロレスリングリターンズ」を放送している。プロレスが「金曜夜8時」にレギュラー放送されるのは実に34年ぶり。番組プロデューサーの篠原弘光氏は「新日本プロレスの人気が復活してきている現在の状況を踏まえ、良い形での放送を検討していく中で、『金曜夜8時』という、かつてのプロレスファンにとって非常に思い入れのあるゴールデンタイムで実現することができた」と力を込める。

 篠原氏は2003年から10年以上にわたり、テレビ朝日「ワールドプロレスリング」のプロデューサーを務め、現在はBS朝日でスポーツ全般を担当。自身も51歳の「金曜夜8時」世代で「アントニオ猪木、坂口征二、藤波辰爾、長州力、タイガーマスク…。輝かしいスターたちの激闘に興奮し、学校の授業があった翌土曜日は、クラスメートたちとプロレス談義や技の掛け合いに明け暮れていた」と明かす。

 テレビ朝日も現在、土曜深夜に「ワールドプロレスリング」を放送しているが、時間は約30分。BS朝日の「…リターンズ」は約1時間なので、長尺で試合を楽しむことができ、さらに、試合をした選手のインタビューでその思いを聞くこともできる。篠原氏は「ネット上に放送を見ながらのコメントが寄せられるなど反響がある。この番組のコンセプトでもあるが、その日のメインカードをノーカットでお見せできていることも大きい」と手応えを語る。

 これはプロレスに限らないが、試合をダイジェストにして放送すると、魅力が薄れてしまう。ファンは、どのように試合が始まり、どう展開し、どんなふうにクライマックスを迎え、どういった結末になるのか、その全てを漏らさずに見たいものなのだ。なので、試合をダイジェスト放送するプロレス番組に満足できないことが多いのだが、「…リターンズ」はその問題を軽減できている。

 昔、アントニオ猪木が相手に必殺技の延髄斬りを放ったところでCMが入り、CMが明けると既に猪木の勝利が決まっているのを見た記憶がある。生中継ならではの出来事で、拍子抜けしたような気もするが、やはり、あのドキドキ感は忘れがたい。現在はネット配信で生中継を見ることもできるが、いつか、再び、金曜夜8時にテレビで見られる日が来ることを、オールドファンとして願う。

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在はNHKなど放送局を担当。

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