「教場」中江功監督 キムタクは“戦友”最初は「誰?」も吸収力でトップに 次回作は枯れた男の恋物語?

[ 2020年1月5日 08:45 ]

開局60周年特別企画「教場」の演出を手掛け、“戦友”木村拓哉と16年ぶりにタッグを組んだ中江功監督(C)フジテレビ
Photo By 提供写真

 俳優の木村拓哉(47)が主演を務めるフジテレビ開局60周年特別企画「教場(きょうじょう)」の後編は5日午後9時から放送される。警察学校を舞台に人間の心理をえぐる究極のミステリーで、4日にオンエアされた前編は木村の身の毛もよだつ鬼教官ぶりや役者人生初の白髪姿が大反響を呼んだ。演出を手掛けた同局の名匠・中江功監督(56)が25年来になる“木村との固い絆”を語った。

 原作は「週刊文春ミステリーベスト10」第1位(2013年)、「このミステリーがすごい!」第2位(14年)を獲得し、13年にミステリー界を席巻した長岡弘樹氏の同名小説。警察学校を舞台に繰り広げられる人間模様を描き、新しい警察小説としてベストセラーに。シリーズ化され、累計発行部数は57万部。今回、ファン待望の映像化が実現した。

 木村が演じるのは、主人公の冷徹な教官・風間公親(かざま・きみちか)。前編、異様に鋭い観察眼を持つ風間は問題のある生徒たちの微細な変化を察知し、徹底的に追い詰め「君にはここを辞めてもらう」と次々に退校届を突き付けた。

 生徒役に工藤阿須加(28)川口春奈(24)林遣都(29)葵わかな(21)井之脇海(24)西畑大吾(22)富田望生(19)味方良介(27)村井良大(31)大島優子(31)三浦翔平(31)ら若手実力派が集結した。脚本は“冬彦さん現象”を巻き起こしたTBS「ずっとあなたが好きだった」(1992年)、フジテレビのメガヒット作「踊る大捜査線」シリーズなどの君塚良一氏(61)。演出は水曜劇場「若者のすべて」(94年)「ギフト」(97年)、木曜劇場「眠れる森」(98年)、月9ドラマ「空から降る一億の星」(02年)「プライド」(04年)などの作品を手掛け、木村と共にテレビドラマ界の伝説を築いてきた中江監督。木村とは「プライド」以来、久々16年ぶりにタッグを組んだ。

 昨年6月のドラマ発表時、木村は「中江功監督という存在は自分にとっては教官に近い存在なので、再び共同作業ができることを非常にうれしく思います」とコメント。中江監督にとっては“俳優・木村拓哉”はどのような存在なのか。

 「年齢は10ぐらい違いますが、全然、教官と生徒みたいな感じじゃなく、ある意味、一緒にやってきた同志というか、戦友みたいな感じはありますよね」と切り出し「最初に出会ったのは『若者のすべて』。この年は僕がチーフディレクターになった年だと思います」。中江監督は94年、1月期の月9「この世の果て」、7月期の月9「君といた夏」、10月期の水曜劇場「若者のすべて」(水曜後10・00)を演出。「当時は1年に3クールぐらいやるのは普通で、チーフ2本とセカンド(ディレクター)1本みたいな。自分としても勢いがあって、乗っていたかもしれないですね。ちょうど当時の“生きのいい”若手俳優が集まったのが『若者のすべて』。とはいえ、まだ木村は“キムタク”と呼ばれる前の頃で『SMAPの木村君がキャスティングされた』と知らされても、僕も最初は『誰?』って聞いたぐらい。主役は萩原聖人ですからね」

 木村が山口智子(55)と社会現象を巻き起こしたフジテレビ月9「ロングバケーション」は、その1年半後、96年4月期のことだ。

 「当時、聖人が『(今回の出演者のうち)役者はオレだけ。あとはタレント』みたいなことを言って、とんがっていて。『ダウンタウンなう』(19年4月)にもネタとして提供したんですが(笑)、そのおかげで撮影現場はいい意味でピリッとして。聖人と僕が2人で芝居の話をしていたりすると、木村が後から僕のところに聞きに来たりするんですよ。『あの(萩原の)芝居はどういう意味?』だとか。木村はいい意味で負けず嫌いで、研究熱心。僕も反復して木村に伝えることで勉強になりましたし、あの時代に一緒にモノ作りをした人たちはみんな同志というか、戦友みたいな感じ。聖人をはじめ彼らがいたから、僕もここまで引き上げてもらったという部分は非常に感じています。『若者のすべて』以降、ずっと木村拓哉を見てきましたが、当時はまだそんなに自信もなく、感覚だけで演じていた彼が、ここまで来れたのは吸収力の賜物。彼は誰かと芝居をすると、その人のいい部分を必ず次の芝居の要素に取り入れてくるんです。芝居の間が取れるようになって、リズムや抑揚も付くようになって、『若者のすべて』1クールの最初と最後で全然違うわけです。だから、その時から『コイツ、凄いな』という片鱗は既にあったのかもしれません」

 木村が「ロンバケ」で頂点を極めた後、中江監督は「ギフト」(97年)「眠れる森」(98年)「空から降る一億の星」(02年)「プライド」(04年)とサスペンスやミステリー、スポ根ラブストーリーで木村の“引き出し”を開けてきた。今回の「教場」は集大成になるのか。

 「集大成だと最後の作品みたいに聞こえるので、集大成というよりは第2章の始まりですね。ずっとヒーローを演じてきた中、今回の風間公親はダークヒーロー。やっと違う場所にたどり着いたという感じはします」と位置付けし「総理大臣もやって、宇宙にも行って、たぶんコスプレもやり尽くしましたよね(笑)」。木村との次回作構想を尋ねると「いつまでもヒーローというわけにもいかないと思いますからね。実は随分前に一度、企画を練ったこともあったんですが、田村正和さんみたいな大人のラブストーリーに挑戦してほしいと思っています。切なく、枯れた男の感じでやりたいんです。もう1つは、映画『検察側の罪人』(18年8月公開)が非常によかった。ああいうスーツ1枚、芝居だけで魅了できる大人の硬派な作品にもっとチャレンジしてほしいので、実はそういう企画も1個あります」とプランが飛び出した。

 「教場」前編(4日)は、主人公が生徒たちに次々と突き付けた“退校届”が「水戸黄門」の“印籠”にも見えてきた。1話完結型の連続ドラマも十分可能で、中江監督も「(木村との次回作としては)『教場2』もやりたいんですよね。後編(5日)は友情と愛と別れを描きます。お正月の前編・後編2本で、いろいろやり過ぎちゃったかな(笑)」。今度は16年も時間を置かず、中江監督と木村のコラボレーションが実現することを期待したい。

続きを表示

2020年1月5日のニュース