紅白4年連続出場ソプラノ歌手、佐藤しのぶさん死去 体調不良でコンサート中止発表5日後…

[ 2019年10月4日 05:30 ]

死去した佐藤しのぶさん
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 日本を代表する人気ソプラノ歌手で、NHK紅白歌合戦にも出場するなど幅広く活躍した声楽家の佐藤しのぶ(さとう・しのぶ)さんが9月29日、死去した。61歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で行った。後日お別れの会を開く予定。夫は指揮者の現田茂夫(げんだ・しげお)氏。

 死因について所属事務所は「故人の遺志により公表は差し控える」としている。

 関係者によると、佐藤さんは9月から体調が急激に悪化。9月24日には体調不良を理由に、10月から2020年1月のコンサート出演を取りやめると発表していた。ここ数年はオペラの出演はほとんどなく、コンサート主体の活動を続けていた。8月4日、宇都宮市文化会館でのリサイタルが最後の舞台となった。音楽関係者は「8月は元気な姿でしたが、今年に入って体調不良で何公演か中止していたので心配していた。ご主人やご家族は突然のことに憔悴(しょうすい)しているようです」と話した。

 美貌と華やかな存在感、豊かな歌唱で、ウィーン国立歌劇場をはじめ、欧米の歌劇場や、東京の新国立劇場など、国内外の多くの舞台で活躍した。クリストフ・エッシェンバッハ氏ら著名な指揮者とも共演した。知人は「音楽には厳しく向き合う人だったが、普段は気さくでとても穏やかな人でした」と人柄をしのんだ。

 87年にオペラ歌手として初めて紅白歌合戦に出演し、4年連続出場。お茶の間のオペラの認知度を高め、クラシックファンのみならず、幅広い層から人気を博した。2014年には團伊玖磨氏のオペラ「夕鶴」のつう役を演じ、話題を集めた。

 30年来の付き合いだったという作詞家で作家のなかにし礼氏(81)は「実力と美貌を兼ね備え、開けっ広げな人柄で、舞台から人間愛を届けた。日本のオペラ歌手でこれほど一般大衆に浸透した人はいないだろう。世界を見て、広い視野を持った人だった」と評した。

 私生活では1987年に指揮者のアシスタントだった現田氏と結婚。92年に長女が誕生し、音楽家同士のおしどり夫婦として知られていた。

 ◆佐藤 しのぶ(さとう・しのぶ)1958年(昭33)8月23日生まれ、東京都出身。国立音大卒。文化庁のオペラ研修所を最年少、首席で卒業。1984年、二期会の「メリー・ウィドウ」「椿姫」でデビュー。文化庁の派遣でイタリアのミラノに留学。世界で活躍するオペラ歌手に。2009年「天皇陛下御即位二十年をお祝いする国民祭典」に出演。ライフワークだった「母の日に贈るコンサート」は今年5月で25回目だった。

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