やらせが発覚で放送休止 本当に怖いのは「視聴習慣がなくなる」こと

[ 2019年9月30日 23:41 ]

 TBSのバラエティー「消えた天才」と「クレイジージャーニー」に過剰演出ややらせが発覚し、相次いで放送休止となった。どちらも事実を前提に、ドキュメントタッチで描かれるバラエティー番組。事態は重く、佐々木卓社長も「視聴者との約束を逸脱したアンフェアな手法があった。あってはならない」と定例会見でわびた。

 「消えた天才」は野球の投手の映像や、サッカーのドリブルの映像を早回しして、実際よりも球や動きが速く見えるように加工した。「クレイジージャーニー」は、希少な生物を発見する企画で事前に用意した生物を使って撮影。どちらも映像をより良いモノにしようとしてやったことだろう。局関係者は「制作現場にはプレッシャーがかかるし、寝る間を惜しんで作業している人間もいる。苦労は計り知れない。だけど、やって良いことと悪いことの判断だけは間違ってはならない」と作り手のモラルの低下を問題視した。

 両番組とも現時点では打ち切りとはなっていない。放送再開するかの判断について、局側は「すべての調査が終了した時点で判断する」としており、現在はどちらも休止中。これにより、バラエティーの制作現場は別の番組を用意しなければならない状態が続いている。休止期間が長引けば長引くほど、代替の特別番組をレギュラー番組のように放送するという状況が続く。

 局のある職員は「別の番組を制作するのも大変だが、局としては視聴習慣がなくなるのが怖い」と話している。レギュラー番組を毎週見てくれる視聴者が増えることが、局にとって最もうれしいこと。だが、せっかく番組になってくれファンを手放すことになる。

 しかも「消えた天才」は日曜ゴールデンの午後8時枠。同局はここ数年にわたって何度も新番組を投入して視聴率獲得を目指している激戦区だ。「クレイジージャーニー」は深夜枠だが、放送される水曜日は同局が10月改編のキーポイントと位置づけた曜日。午後7時の「東大王」から、午後11時56分に始まる「クレイジー…」までの流れを意識して、午後8時、9時に新番組を用意した。出鼻をくじかれた形で、大きな痛手となったことは間違いない。

 局の中には「既存の番組や、レギュラー化を目指している番組のスタッフの中には“今がチャンス”と考えて頑張ってる人もいる。どこかで良い流れを作れれば」と前向きに捉える人もいる。「ピンチはチャンス」と言うが、TBSがこのピンチをどう切り抜けていくのか注視していきたい。(記者コラム)

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2019年9月30日のニュース