「マワシヨミジャンプ」古くて新しい漫画アプリ?

[ 2019年2月28日 17:24 ]

「マワシヨミジャンプ」の画面
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 集英社が1月10日にリリースした無料漫画アプリ「マワシヨミジャンプ」が面白い。GPSの位置情報に連動した簡易マップに電子コミックが配置され、好きなものを1冊ずつ読める仕組みで、2月24日にアプリ内のダウンロード冊数が100万回に達した。

 読める漫画はジャンプ作品を中心に、新旧さまざまの約600冊以上。雑誌も週刊少年ジャンプ、ジャンプSQ.に加え、24日からウルトラジャンプが加わった。

 気になっていた作品もあれば、表紙につられる作品もある。1巻があるとは限らず、途中の巻だけあることも多いが、物語の前後を想像するのも楽しい。

 漫画の電子化が進み、スマホで読む機会が増えた。読みたい漫画が読みやすくなってありがたいが、一方で読みたいものばかり読んでいる気もする。もちろん、間違った行動ではないのだが…。

 日本の漫画は、多様な作品を集めた「漫画誌」を中心に発展してきた。これは、人気作の勢いを生かして新人育成ができるなど、製作側に利点があるだけではない。読者にとっても、幅広い作品が読める利点がある。知らなかった作品に目を通すチャンスにもなる。結果、目の肥えた読者が多く誕生した。このことも、日本の漫画が世界的コンテンツに成長した一因だと記者は考えている。

 だが、このビジネスモデルは徐々に変化していく。1つの作品をまとめた単行本の売り上げに比重が置かれ始め、90年代半ばから漫画誌の売り上げが落ち始めた。漫画のデジタル化は、この流れを加速させる方向に進み、いずれ漫画界全体の勢いを損なうことにならないかと個人的に懸念していた。

 それだけに「マワシヨミジャンプ」の、従来になかった視点に期待している。アプリ内にキープできるのは1冊。読み終えた漫画はマップに置き、次の1冊を探すことになる。位置情報と連動しているため「拾った場所」と「手放す場所」が違うことも多い。人気作品は、各地をぐるぐる回ることになる。

 開発コンセプトは「電車の網棚に載った漫画誌」という。時間潰しで偶然手に取った一冊から始まる、作品との出合い。そこに気になる物語が展開されていることもある。1シーン読んだだけで、心引かれる作品もある。友人の家や、理容室などで偶然読んだ漫画のファンになった経験などを思い出した。

 電子機器の進化は、漫画だけでなく、紙を使った文化の構造を大きく変えている。新聞業界も、柔軟な発想で電子化に取り組まなくてはいけない。(記者コラム・岩田 浩史)

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