こぼれ話はキラリと光る“いい話”の宝庫!

[ 2019年1月26日 09:00 ]

「カメラを止めるな!」で毎日映画コンクールの監督賞を受賞した上田慎一郎監督
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】2018年毎日映画コンクール(第73回)の各賞が22日に発表された。喜びの声を拾うため、受賞者への取材を重ねたが、紙面には限りがあってインタビュー内容を丸々掲載する訳にはいかない。

 「何とももったいないことだ」といつもため息が出る。そこで今回はこぼれた話を当コラムで紹介してみたい。その人の人生がにじみ出る“いい話”が目白押しだ。

 まずは「カメラを止めるな!」で監督賞に輝いた上田慎一郎監督(34)から始めよう。上田監督は昨年2月15日にミューザ川崎で行われた毎日映コンの表彰式を客席から見ていたそうだ。

 「こんぷれっくす×コンプレックス」でアニメーション映画賞を受賞したふくだみゆき監督(31)は上田監督の奧さん。この作品で上田監督もプロデュースと編集を担当していて「うれしさもあったけど、“次はオレが自分の作品で帰ってくるぞ!”と思ってました。まさか翌年に実現するとは…」とびっくり顔だ。この時すでに「カメ止め」は完成しており、「懇親会で業界関係者にサンプル盤をお渡ししていました」と笑わせた。

 このインタビューの3日後、夫人のふくだ監督の姿が「マイナビ第3回日本こども映画コンクール」(スポニチなど主催)の表彰式会場にあった。審査員としての列席だ。「今年は客席から夫の晴れ姿を見る番ですね」と水を向けると「そうですね」とうれしそうに笑った。ほほ笑ましい夫婦だ。

 田中絹代賞の白川和子(71)の話にも引き込まれた。年配の方には「ロマンポルノの女王」としておなじみのベテランだ。結婚を機に芸能界を離れる際には「実録白川和子 裸の履歴書」(73年2月公開)という引退作まで作られたほどの女優。「引退映画が出来たのは藤純子さん(現・富司純子)と私くらい。彼女は“緋牡丹”で、私は“泥沼に咲くハスの花”と言われたものよ」と当時を懐かしんだ。

 「歌謡界の女王」と呼ばれた美空ひばりさんの特番ドラマをTBSが制作したことがあった。これに白川も出演。「顔合わせの時、ひばりさんが最後に部屋に入ってこられて、私にこう言うの。“あなたも女王よね”って。笑い話よね」

 天台宗を開いた伝教大師最澄の言葉に由来する「一隅を照らす」という言葉が好きだという。社会の片隅で自分に出来る努力を精いっぱいしていれば、それがすなわち社会に貢献したことになる。そんな意味を持つ。作品の大小に関わらず常に全力投球の白川らしい言葉ではある。

 何度も舞台で共演した美輪明宏(83)の言葉も忘れがたいと話した。

 「S席1万円。2人で来たら2万円。食事をしたり、電車賃を含めたら3〜4万円にもなる。それに見合うような芝居をしないと、あなた詐欺ですよ」

 亥(い)年生まれの白川は6回目の年女。「美輪さんも一回り上のイノシシ年なのよ」と笑った。

 「菊とギロチン」で女相撲の力士を演じ、スポニチグランプリ新人賞を受賞した木竜麻生(きりゅう・まい、24)は部活で新体操をしていたそうだ。昨年公開されたもう1つの映画「鈴木家の嘘」で新体操を練習するシーンが出てくるが、実は彼女が経験者という話を耳にした野尻克己監督(44)が設定を変えて実現したシーンだ。「最初は違う運動(陸上)だったんですけど、監督が“それもありだ”という話になって、変わりました。小・中と新体操をやっていたので、体は柔らかいんです。“菊とギロチン”の股割りはおかげで苦労しませんでした」と明かした。

 「万引き家族」で日本映画大賞に輝いた是枝裕和監督(56)からは樹木希林さんにまつわる話が聞けた。

 「入れ歯を外して撮影に臨んだ希林さんが甘味屋で歯茎だけで餅をしゃぶるシーン。それを目の当たりにして、“何十年かかってもいいから、あんな顔で映画に出られる女優になりたい”と松岡茉優さんが言っていた」

 希林さんは昨年9月に黄泉(よみ)の国に渡ったが、しっかり共演者たちにも“置き土産”を遺していった。

 さて、来年はどんな話が聞けるだろうか。

(編集委員)

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