瑛太「西郷どん」大久保利通として生きた1年、苦悩の日々乗り越え「底力ついたかな」

[ 2018年11月18日 08:00 ]

「西郷どん」で大久保利通を演じる瑛太(C)NHK
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 NHK大河ドラマ「西郷どん」(日曜後8・00)で大久保利通を熱演する俳優の瑛太(35)。主演で西郷隆盛を演じる鈴木亮平(35)とともに“維新の三傑”として幕末から明治の激動期を駆け抜けた。18日放送の第43回「さらば、東京」では、明治政府で対立を深めた2人が袂を分かち、互いの道を歩み始めることに…。先月クランクアップした瑛太が撮影終了前にインタビューに応じ、17年7月から1年3カ月に及んだ撮影を振り返った。

◆大久保は「変化の振り幅大きい人物」演じるのが大変で「胃痛が」◆

――クランクアップを迎えたときの心境を教えてください。

 「1年3カ月という期間は過酷でしたが、撮影を終えると、必ず自分自身に役者としてのプレゼントがもらえるといいますか、乗り越えただけの底力がついた気がします。大河は『篤姫』(08年)に続き2度目ですが、少しは底力がついたかなと感じています」

――長期間撮影の難しさは。

 「実は撮影の初日、8時間待ちだったんです(笑)。そのぐらいワンカットに愛情を持って、スタッフもキャストも一丸となって取り組んできました。3、4カ月で撮影する連続ドラマとは、達成感のようなものが違うと思います。“今日がんばった、終わった”じゃないんです。すぐに次の週のセリフを(頭に)入れていかないといけない。プロだから100点を目指さないといけないのですが、自分の中で80点以上が出せない時もあって“これでいいのかな”と自問自答する1年3カ月でした」

――演じてきた大久保利通について、瑛太さんの解釈を教えてください。

 「変化の振り幅が大きい人物です。青年時代に理不尽な理由で謹慎処分を受ける。希望を持って生活しているのに、物事がうまく運ばないストレスを抱えながら“いつか見ていろよ”という思いがあった。光なのか闇なのか分かりませんが“いつか何かを成し遂げてやろう”という気持ちを持っていたと思います。その部分を演じるのは大変でした。例えるなら、大久保は物凄く硬いバネを縮めたような状態をずっと続けてきた。それが僕自身に負荷として掛かっていました。ずっと消化不良のような状態なので、大久保のように胃痛がして撮影に行くのに足が重くなったことも…。中間管理職的な立場で、自分の感情を吐けない窮屈さがあった大久保ですが、徐々に見せ場が出てきます。終盤に集約されているといっても過言ではありません」

――明治編では大久保利通と西郷隆盛の関係が変わり始めます。

 「台本を読んで、人としてはお互いのことが好きなのに、思想の違いで離れていく感覚が面白いと感じました。そこにドラマがある。時にはぶつかり合いながらも、野心を持ち続けて進んできた2人ですので」

◆西郷と決別、作品作り上げてきた鈴木亮平と対峙し「つい涙腺が…」◆

――第43話「さらば、東京」では西郷と1対1で話し合い、そして決別する場面があります。どのような気持ちで撮影に臨みましたか。

 「2人だけのシーンは凄く楽しみでした。衝動のようなものをいかに素直に出せるかが芝居の面白さだと思う。鈴木亮平くんと“本番でどこまでいこうか”という話し合いはしませんでした。僕は本番まで、大久保は西郷を全てはねのける気持ちだったのか、それとも西郷を受けいれてしまう気持ちがあったのか、どっちなんだと悩みました。迎えた本番。冷徹でいることは無理だった。亮平くんのここまで積み上げてきた役の重さと、西郷から見た大久保への愛情みたいなものを受けてしまった。実は台本の雰囲気と真逆の方向にいってしまったんです。台本では演技に“余白”が与えられていると思っていましたが、僕はこのあと2人が一生会えなくなるのを知ってるから、つい涙腺が緩んでしまった。その時の演技は良くなかったかもしれませんが、監督さんがオッケーを出したので、このドラマの中で、あの場面が友情として成立したのならいいのだろうなと思いました」

――明治編では大久保のここを見てほしいという部分を教えてください。

 「大久保なりの誠実さですね。日本のためにどうすればいいかがはっきりしてきます。岩倉使節団として渡航し帰国した時に、欧米の文化を日本に取り入れなければいけない、そのためには何をなさねばいけないかと必死に考えた。強い決断力と、ある種の残酷さがあります。あの時代に大久保は真実を知っている気がしました。大久保にとっての正義があり、西郷と食い違った理由が僕の中ではすっと腑に落ちてきた。それでも吉之助(隆盛)さぁのことは死ぬまで好きでしたからね。思想の違いでぶつかることがあるが、最後まで吉之助さぁとは心が繋がっていたということが、このドラマの見どころだと思います」

――大久保利通として生きた1年3カ月でした。

 「大河ドラマに出る喜びは老若男女、特に年配の方に見てもらえること。街中でもよく声を掛けていただいて。ラストシーンを撮影する前に、鹿児島にいる祖父と電話で話したのですが、“毎週楽しみに見ているよ”と言ってくれた。おじいちゃん孝行ができたかな。嬉しいです」

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