広井王子氏手掛ける“ナニワの少女歌劇団” 宝塚でもアイドルでもない新しい形に

[ 2018年10月30日 10:00 ]

吉本興業が手がける「少女歌劇団」プロジェクトの発表会見に出席した(左から)「学天即」よじょう、奥田、「尼神インター」誠子、渚、広井王子氏、ゆりやんレトリィバァ、三秋里歩、門脇佳奈子
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 プロデューサー・広井王子氏のイメージは「天外魔境ZIRIA」にある。PCエンジンで1989年に発売されたゲームソフトで、CD―ROMを使い、登場人物が話す画期的なシステムを採用。当時はスーパーファミコンの発売前。その時代にアーケードゲーム以外で“画面”がしゃべるのは夢のような話だった。

 16世紀の架空の国「ジパング」を舞台に13匹の妖物を退治していくRPGは、昭和の特撮「仮面の忍者 赤影」のような独特の和洋折衷の世界観。一気にひきこまれ、ほとんど3日間徹夜でラスボスまで倒した。2作目は、ファンの間でいまだに“神ゲー”と言われる出来だ。

 その広井氏の名前を見て久しぶりに「おっ!」と思ったのが先日の京都国際映画祭だった。「清く・明るく・麗しく」をテーマに、吉本興業とタッグを組んで来年夏に「少女歌劇団」を立ち上げるという会見を開いた。大阪市内に常設劇場を作り、30人ほどのチームを手始めに、将来的には「雪」「月」「花」の3組を設立。20歳で卒業という規則も新しい試みだ。

 最大のポイントは「和」との融合を図るという点。「衣装など表層的なものではなく、礼儀作法など精神的、内面的な日本人女性の美しさを表現していきたい」(関係者)。既存のアイドルとの違いをどう打ち出していくのか、華道や日舞などを取り込み、和のテーストを舞台でどう表現するのかが気になるところ。もちろん歌劇団のアイコンとなる少女の存在も欠かせない。

 広井氏は96年発売のゲーム「サクラ大戦」を手掛けたことでも知られる。アニメ、舞台のメディアミックスで大ヒットを飛ばした作品だ。こちらは少女たちによる「帝国華撃団」が帝都の平和を乱す魔物を倒す物語。テーマソングの「檄!帝国華撃団」も広井氏が作詞を担当している。そういう意味で「少女歌劇団」の見せ方は熟知していると言える。

 “ナニワの少女歌劇団”は、将来的にゲームやアニメ化を視野に入れていることは想像に難くない。広井氏は会見で「歌劇団にCGメンバーを入れます。そうじゃないとらしくない」と宣言。初音ミクのようなボーカロイドによるチームを立ち上げる可能性もある。

 劇場公演中心で、その模様を全世界に配信するというのも今を象徴している。89年に始まった平成が終わり、アイドル不毛の地と言われる大阪で生まれるエンターテインメントは、宝塚歌劇団でもアイドルでもない新しい形となりそうだ。(記者コラム)

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2018年10月30日のニュース