麻生美代子さん死去 92歳 「サザエさん」の母フネ役初代声優「最期はまるで笑っているかのよう」

[ 2018年9月4日 05:30 ]

フジテレビ「サザエさん」の一場面。左が麻生さんが担当していた磯野フネ(C)長谷川町子美術館
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 アニメ「サザエさん」で磯野フネ役の声を2015年まで46年間担当した声優の麻生美代子(あそう・みよこ、本名左近允美代=さこんじょう・みよ)さんが8月25日午前7時23分、老衰のため都内の自宅で死去した。92歳。東京都出身。葬儀・告別式は親族のみで行った。後日お別れの会を開く予定。サザエの声を担当する加藤みどり(78)は「頼りになる先輩でした」と“母”を悼んだ。

 国民的アニメを半世紀近くも「お母さん」として支えたベテランがほほ笑みを残して旅立った。

 麻生さんが所属する俳協(東京俳優生活協同組合)の朝田孝二理事長(58)は親族とともに最期をみとり「亡くなる前日の夜から、ウトウトと眠る時間が長くなり関係者が付き添っていました。本当に静かに息を引き取り、最期はまるで笑っているかのようでした」と語った。

 08年に夫で「サザエさん」の音響を担当していた洋さん(享年76)に先立たれ、近年は一人暮らしだったという。2人の間に子供はいなかった。

 フネの声は1969年に「サザエさん」の放送が始まってから2015年まで46年間務めた。休んだのは、09年6月に腸閉塞になった時の1度だけ。フネ役を交代した後も声優として活躍し、テレビ東京系のクイズバラエティー番組「和風総本家」のナレーションを今年3月22日放送分まで担当した。

 朝田氏は「フネさんは昭和のおしとやかなお母さんですが、本人は至って明るく朗らかでチャーミングなおばあちゃん。舞台などで知り合った若い人と話すのも好きでした」と人柄をしのび「特に病気らしい病気もなく元気でした。最近まで歌ったり、立って踊ったり。普通に話をして歩くこともできました」と快活だった様子を語った。

 麻生さんを知る人によると、趣味は海外旅行とスキューバダイビング。80歳近くまで海外の海に出かけて潜っていた。

 初回放送から共演したサザエ役の加藤みどりは「何かあればいつも麻生さんに相談できて、頼りになる先輩でした」と振り返り「80歳になられても声が出るし、滑舌も良く先輩として皆の目標になっていました。私の中では同じ形で麻生さんが生きているような感じがします」とコメントした。

 ▼貴家堂子(「サザエさん」でタラちゃん役)とても残念で寂しいです。安らかにお眠りください。

 ▼アニメ「サザエさん」スタッフ一同 フネさんは優しくてしっかり者でありながらかわいらしいところもある、磯野家自慢の母でした。一人の女性として誰もが憧れるフネさん像を築いてくださったことに、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。スタッフ一同、これからも麻生さんの思いを大切につないでいきたいと思います。

 ▼テレビ大阪三好直プロデューサー(「和風総本家」制作)年を重ねてもなお、ひとたびナレーションブースに入ると、素晴らしい声で読んでいただける…その姿は番組で数々の職人さんを取材してきましたが、まさに“職人中の職人”でした。

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