幻の4コマ漫画を連ドラ化「義母と娘のブルース」 脚本家・森下佳子氏の挑戦
綾瀬はるか(33)主演のTBS連続ドラマ「義母と娘のブルース」(火曜後10・00)が10日にスタートする。脚本は同局「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)、「白夜行」(06年)、「MR.BRAIN」(09年)、「JIN―仁―」(09、11年)、「とんび」(13年)、「天皇の料理番」(15年)などで知られ、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13年)では向田邦子賞、橋田賞に輝いた森下佳子氏(47)が担当。家族愛を描いた4コマ漫画原作をドラマ化する意気込みを森下氏本人に聞いた。
◆原作は“幻の4コマ漫画” 最後のメッセージに感銘「全10話を費やす価値ある」
ドラマの原作は現在、入手困難となっている桜沢鈴氏の同名4コマ漫画。バリバリのキャリアウーマン・亜希子(綾瀬)と、結婚相手・良一(竹野内豊)の連れ子である8歳の娘とのほのぼのした日常を描く心温まる物語で、ドラマでは義母と娘がともに成長する10年間を描く。
森下氏は原作の印象を「すごく面白い。4コマ漫画ですけど、4コマを形成しながらも最後まで話がつながって流れていく。これならテレビドラマにもしやすいと思いました」と語る。物語のテーマは家族愛。「親の愛情の正体とは何か、と考えた時になかなか明確な答えは見つかりませんが、原作の最後に出てくるセリフに感銘を受けました。このメッセージを伝えるためだけに、(連続ドラマの)全10話を費やす価値があると思います」と主題を明かした。
家族内で起きる凄惨な事件が日々報じられる今、家族愛をテーマとするドラマの脚本を担当することに意義を感じている。「血のつながった親でさえ残酷なことをしてしまう一方で、血がつながらない家族が強い絆で結ばれていることもあります。何をもって『家族』と呼ぶべきか、1人の親としても1度考えなきゃならないな、とも感じていました」「原作が4コマ漫画なので、基本的にはクスッと笑って、ホロッと泣いていただければ幸せですけど、『家族とは何か』ということを考えるきっかけにもなってくれれば」と脚本に込めた思いを語った。
◆「全力では殴らない」 森下佳子氏の新たな挑戦
初めて4コマ漫画原作の脚本を手掛ける森下氏だが、今作にはもう1つ大きな挑戦を掲げ、臨んでいる。今回、「世界の中心で、愛をさけぶ」「JIN―仁―」「天皇の料理番」など、数々の大ヒット作をともに手掛けたスタッフと再タッグを組むが、「前回こうやったから、今回も同じような形で…という仕事はあまりしたくない」と新たな表現方法に挑戦する。
これまでは「私も演出の平川さんもガーッと行き切る作りをしてきた」と“最大出力”の演出で物語のクライマックスを盛り上げてきた。「世界の中心で、愛をさけぶ」の最終盤で、意識を失ったアキ(綾瀬)を抱きかかえた主人公・サク(山田孝之)が涙しながら「助けてください…」と声にならない叫びをあげる場面は今でも多くの人の記憶に残る名シーンとなっている。しかし、今作では「(演者が)大泣きはしていないのに、深い悲しみが伝わる。そのような形でじんわりと感情を伝えることができないだろうかと模索している」という。
「これは私たちにとってはすごくチャレンジなんです。これまでパンチするときに全力でガツンと殴ってきた人間が全力で殴らない。正直、『ちゃんと伝わるのかな…』と怖い」と苦笑しつつも、「自己満足かもしれませんが、惰性で作品作りをしたくないという思いがあります」と表現者としての矜持も垣間見せる。「ドラマを作るという仕事は、結果的に世間の方々を作り手側と同じ温度にもっていけないことは多々あります。でも、私たちが面白がって作っていないと、作品の魅力は絶対に伝わらない。小さいチャレンジだとしても、ずっと挑戦を続けていきたいですね」。
人気作を連続して世に送り出しているTBSドラマ枠。7月期は、脚本家・森下佳子氏が「挑戦」と位置づける4コマ漫画原作の“異色ドラマ”が話題を集めそうだ。
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