カラン、コロン…文学座「怪談 牡丹燈籠」の20年ぶり再演に酔う

[ 2018年6月2日 09:30 ]

柳の木の下で「怪談 牡丹燈籠」を アピールする岡寛恵(左)と永宝千晶
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】そろそろ梅雨入りの季節。5月も半ばを過ぎてからじめじめする日が続いており、既に気は滅入っている。今年の夏は暑そうな予感がする。

 芝居でも寄席でも、夏の定番といえばやっぱり怪談だ。落語家の立川志の輔が東京・下北沢の本多劇場でかける「牡丹灯籠」も風物詩としてすっかり定着。今年は7月31日から8月12日までの日程が組まれている。

 文学座も「怪談 牡丹燈籠」を20年ぶりに上演中。5月31日、新宿の紀伊國屋サザンシアターで観劇した。志の輔は「灯籠」の文字を使い、文学座は「燈籠」を使う。

 カラン、コロンと闇夜に響く下駄の音…でおなじみの原作は、江戸末期から明治時代に活躍した落語家・三遊亭円朝が25歳の時に書いた怪談噺(ばなし)。浪人の萩原新三郎に焦がれ死にするお露、新三郎の下働きをしていた伴蔵とお峰、そして家督を狙ってお露の父・飯島平左衛門を情夫の源次郎とともに殺してしまう平左衛門の愛人お国の話が絡み合って、人間の業の深さをあぶり出す。

 通しでしゃべれば15日間もかかる大長編。複雑に入り組んだ物語を志の輔は前半をボードを使った説明タイムに当て、観客の理解を助長した上で、後半にたっぷりと高座でしゃべる。文学座の芝居は16年に86歳で他界した劇作家の大西信行氏の脚本をもとに鵜山仁氏の演出で上演。幽霊の手助けをして大金を得た伴蔵とお峰を中心に、人間の弱さ、哀しさを一つの因縁話として描き出す。

 杉村春子のお峰と北村和夫の伴蔵のコンビで1974、86、95年と上演され、98年には新橋耐子と北村の顔合わせで再演。文学座にとっては財産の一つとなっている大事な演目だ。

 お峰を演じた富沢亜古、伴蔵の早坂直家はじめ役者陣が奮闘。公演前に話を聞いた「お国」役の岡寛恵と「お露」の永宝千晶もそれぞれ迫真の演技を披露している。

 大林宣彦監督の映画「時をかける少女」(83年)などに出演し、将来を期待されていた19歳の時に交通事故に遭い、顔面にガラス片が刺さる大ケガを負った岡。5回も手術を受ける一方で、泣く泣く女優業を断念。「7年ほど他のことを経験しました。20代の前半までなら、いくらでもやり直しがきくと思ったんですが、やっぱりやりたいことは一つだった。それで20代半ばで研究所に入りました」と振り返るが、その情熱が芝居にも出る。今では劇団に欠かせない存在だ。

 お国役については「傍からみれば悪い女に見えますが、当人としたら“生きていくために正しいことをしてるんだ”というつもりで演じます。自分の中の引き出しから女の情念とかをどれくらい出して、膨らませられるか」と語ったが、見事に体現していた。

 お露を演じた永宝は「幽霊は初めてです。着物を着てのお芝居も初。所作とか勉強になることばかり」とどん欲に吸収。その上で「目に見えないはずのものが舞台上に生きてなきゃいけない。お露は17歳の女の子。好きな人が出来て、その人のことばっかり考えている。私も10代の頃の初恋とかを思い返し、その思いの強さみたいなものを大事に演じます」と誓っていたが、何としても愛する人に会いたいという一途さがしっかり出ていた。

 岡と永宝は吹き替えでも活躍中。岡は映画「バイオハザード」シリーズのミラ・ジョヴォビッチや「スパイダーマン」のメリー・ジェーン、さらにケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロウらでおなじみ。永宝は「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のヒロインのレイの声を当てた。他流試合で実力を磨き、舞台に生かす。これからも目が離せない2人だ。(編集委員)

 ◆佐藤 雅昭(さとう・まさあき)北海道生まれ。1983年スポニチ入社。長く映画を担当。

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