久保王将が就位式 レジェンド仲間入りに手応え、永世位へ意欲

[ 2018年5月22日 05:30 ]

王将就位式のあいさつで笑顔をみせる久保王将(撮影・坂田 高浩)
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 第67期王将戦7番勝負(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)で4期目の獲得に成功した久保利明王将(42)の就位式が21日、大阪市福島区のホテル阪神で開かれた。4期は故大山康晴15世名人の20期、羽生善治竜王(47)の12期、中原誠16世名人(70)の7期に次いで谷川浩司九段(56)と並ぶ4位タイ。永世名人(有資格者を含む)ぞろいのレジェンドへの仲間入りに手応えを示し、通算10期が条件の永世王将への意欲も語った。

 7番勝負は豊島将之八段(28)を4勝2敗で退けた。豊島は現在進行中の名人戦で挑戦こそ逃したが挑戦者決定戦準決勝まで進出。来月開幕する棋聖戦は羽生への挑戦が決まっている。現役最強の一人であることが間違いない豊島相手の王将防衛だけに輝きも増した。

 過去4人しかいない4期以上の獲得。4人はいずれも戦後6人しかいない永世名人だ。「レジェンドに近づけているというのは自信、励みになります」。勝った喜びと、それ以上の特典を実感する。「防衛した喜びもあるが来年も指せる、タイトル戦に出る権利を得たことが最大の価値です」。防衛の意味をそう表現し、通算100期目のタイトル獲得を目指して名人挑戦中の羽生の名を挙げる。

 「だから羽生さんは強い。タイトル戦は自分を高めてくれる場所です」。強敵相手の公式戦を重ねることで、実力も蓄えた永世7冠の勝利の方程式にならう決意だ。

 あいさつでは「一番応援してくれた人」という、亡き恩人への感謝も述べた。故郷・兵庫県加古川市の将棋協会前会長・柿本武男さんは、6歳から将棋を教えてくれただけでなく、後援会設立にも奔走。「心眼」と記した王将戦復位記念の扇子を届けた昨年10月22日、その3時間後に69歳で亡くなった。

 「王将は守らないといけないよ」が生前の言葉で、7番勝負開幕を前に「ここまで強い思いで臨んだ対局はなかった」。第1局、持ち時間8時間の半分以上4時間22分を残した豊島に敗れた。「気負い過ぎている。獲ろう、獲ろうとし過ぎない」と反省し、第2局以降、立て直した。

 年明けから5期目を目指す戦いが始まる。通算10期が条件の永世王将については「5期にしてほしいです」と苦笑いする一方、「ハードルは高いが精進したい」。折り返すことで初めて見えだすゴールへ、歩みを重ねていく。

 ◆久保 利明(くぼ・としあき)1975年(昭50)8月27日生まれ、兵庫県加古川市出身の42歳。淡路仁茂九段門下。93年四段に昇段し、09年の第34期棋王戦で初タイトル。翌年の第59期王将戦で当時の羽生善治王将に勝利し、自身初の2冠保持者に。タイトル獲得は王将4期、棋王3期の計7期。1メートル66。

 ▼スポーツニッポン新聞社河野俊史社長 豊島八段との7年ぶりの関西トップ棋士同士の対決が話題となりましたが、昨年12月のA級順位戦から4月までの公式戦19局のうち9局が豊島八段との対戦でした。王将位4期は歴代4位で今年43歳になられますが、脂の乗りきった棋士。5つ年上の羽生竜王らとともに、藤井七段ら若い棋士たちの大きな壁になって、ますます前進していただきたいと思います。

 ▼日本将棋連盟佐藤康光会長 第67期王将就位式が今年も大阪でとなりました。7期ぶりの対戦は掛川で始まり、調子の良さを継続していた豊島八段が3時間38分という早い時間での勝利で始まりました。しかし、第2局からは久保王将が、振り飛車を使い、攻守にわたって非常にさえた将棋で逆転。大変な日程の中で見事に4勝2敗で防衛されました。今後も円熟味を増した将棋を見せていただきたいと思います。

 【第67期王将戦VTR】

 ▼第1局(1月7〜8日、静岡県掛川市・掛川城二の丸茶屋)戦型は相振り飛車。封じ手時点で豊島が勝ち筋を確信。88手で快勝。

 ▼第2局(1月27〜28日、佐賀県上峰町・太幸園)久保の四間飛車。豊島の4枚穴熊を端攻めから突破し104手でタイに。

 ▼第3局(2月3〜4日、栃木県大田原市・ホテル花月)2度目の相振り飛車。豊島が2日目3時間11分の大長考も、久保が角切りから97手で連勝。

 ▼第4局(2月19〜20日、兵庫県尼崎市・都ホテルニューアルカイック)3度目相振り飛車に。両者残り時間2分ずつ、130手の熱戦は久保が攻防の一着で制して3連勝。

 ▼第5局(3月6〜7日、島根県大田市・さんべ荘)久保の四間飛車。1日目は38手のスローペース。2日目、豊島が一石二鳥の歩から反撃。96手で2勝目。

 ▼第6局(3月14〜15日、長野県松本市・松本ホテル花月)久保の中飛車。序盤豊島に馬を作られたが、駒得を拡大。王頭戦を120手で制して防衛。

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