あのポーズは?

[ 2018年2月8日 07:30 ]

久しぶりに多数のメディアに囲まれた藤井                      
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 【我満晴朗のこう見えても新人類】藤井聡太四段が五段への昇段を決めた2月1日の順位戦、熱き戦いが佳境に入った夕刻だったと思う。現場の将棋会館でネット中継のモニターを見つめていた筆者は不覚にも「ああっ」と声をあげてしまった。

 画面には脇息(きょうそく)に身を預け…というよりも、激しくうずくまって頭を抱えている史上最年少棋士の姿が映し出されている。上半身をぱたんと二つ折りにして。まるで格納されたパンタグラフのようだ。

 どこかで見た光景。

 そうだ!あれは2017年12月23日の天皇誕生日に深浦康市九段と対戦した叡王戦。

 中盤から終盤にかけて大きな優位を築き上げ、自身2度目のA級棋士に対する白星を獲得する寸前だった。だが、わずかな緩手で一瞬のうちに攻守が入れ替わり、あっという間に敗勢となったあの一局。終局近く、脇息を抱え込むようにして苦しみもだえる姿を見て「結構分かりやすいな…」とつぶやいた覚えがある。なんだかんだ言って、まだ15歳なのだから。

 …という記憶があったので、今回の順位戦も一瞬困惑した。もしかしたら、藤井は自分の不利を悟ったのかも。スマホを取り出し「負けかもしれません」とデスクに報告を入れた。もちろん筆者の目は相変わらず節穴で、結果は正反対。午後11時5分、梶浦宏孝四段(22)を投了に追い込み、史上初の中学生五段が誕生したのは皆さんご承知のとおりだ。

 それはさておき、あの動作は何だったのだろう。深浦戦でのように「白旗」を掲げたサインと同列にあったのか。いや、そこまで大差を付けられたわけでもない。にもかかわらず、天才少年は脇息に突っ伏した。

 ブラフ、だろうか。

 まさかそこまで狡猾(こうかつ)とは思えない。

 こちらも悶々としてきた。いっそのこと本人に確認してみようか。無理無理。勝負師がそんな簡単に自らの弱みを明かすことはないだろう。仮に教えていただくことになったとしても、たぶん引退後だ。当方、とっくにくたばっている。

 閑話休題。五段昇段に伴い、これからは「藤井余談」と変換ミスする心配がなくなった筆者はひたすら安堵(あんど)している。もっともそれ以外の細かな間違いが多いので、今後も余談を許さないけど。(専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京生まれの茨城育ち。夏冬の五輪競技を中心にスポーツを広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。時々ロードバイクに乗り、時々将棋の取材もする。

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