「陸王」でハマリ役 阿川佐和子さんが流した本物の涙「5重の泣きがあったんです」

[ 2017年11月2日 10:10 ]

「陸王」で連続ドラマに初めてレギュラー出演している阿川佐和子さん
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 TBS日曜劇場「陸王」で連続ドラマに初めてレギュラー出演している、エッセイストの阿川佐和子さんの演技が好評だ。足袋業者「こはぜ屋」の元気で可愛らしいおばちゃん・あけみ役。起用した伊與田英徳プロデューサーが「もうあけみさんにしか見えないですよ」と笑うほど、役柄がハマっている。

 視聴者の涙を誘ったのは、第1話のクライマックス。流した涙は演技ではなく、本物だった。

 阿川さんは「もうボロボロでしたよ。役所さんのセリフを聞いてるだけで泣けちゃって」と振り返る。

 実は、さまざまなことが重なって、涙が止まらなかったという。

 業績が芳しくない「こはぜ屋」の4代目社長・宮沢紘一(役所広司)に、口が達者で冷酷な銀行員が従業員のリストラを勧める場面。

 宮沢はマラソン足袋開発という新規事業で状況を打開することを決断し、リストラをしないことを断言、銀行員を打ち負かす。阿川さん演じるあけみも含めた従業員はやりとりを耳をそばだてて聞いていた。その後、宮沢が姿を現した時、あけみが「みんな何グズグズしてんだよ。さっさと本業の足袋の仕事終わらせて、マラソン足袋の試作品作るんだろ?」と言って従業員が一丸となる、というシーンだ。

 撮影はこの一連の流れを、カットせずに行った。役所の演技を受けた後、セリフを準備していた阿川さんだが、「役所さんのセリフを聞いてるだけで泣けちゃって。泣いて感情移入しているんだけど、役所さんが目を真っ赤にしてあの顔でニッコリして出てくるのを見ちゃうと、あれだけ練習したセリフが出てこないんですよ」。

 役所のセリフを聞き過ぎないようにと意識しても、涙がウルウルと出てきてセリフが出て来ない。役所の演技への感動のほか、重圧に対する「泣き」もあった。

 従業員役の中に遠方から参加している役者がいたことも、重圧に加わった。「私がミスしたらまた最初から撮り直し。(役者が帰りの)電車に間に合わなかったら、私の責任になる」。

 思い悩んで、出来なくなって1回泣いてしまった。「そうしたら、こはぜ屋のみんなが“大丈夫!次は出来る!”って励ましてくれて、また泣いちゃって。あの演技は、5重ぐらいの“泣き”があったんですよ」と明かした。

 感動、重圧、悔しさ、優しさ。さまざまな泣きたい気持ちを乗り越えてようやくOKが出た。

 完成した映像は、第1話の試写会で役所の隣で見たという。「次の仕事があってすぐに出ようとしたら、後ろから肩をポンポンとたたく方がいた」。振り返ると、役所が握手を求めてきた。帰り道、阿川さんの目はまたウルウルしていたに違いない。(記者コラム)

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2017年11月2日のニュース