年々増えるクマによる人身被害 社会全体で向き合う時代に

[ 2017年7月14日 10:50 ]

5月、青森県側で配られた、クマへの警戒を呼び掛けるチラシ
Photo By 共同

 今年も山菜採りなどで山に入った人がクマに殺傷される事故が北海道や東北地方で相次いでいる。秋田県仙北市田沢湖玉川で5月27日、タケノコ採り中に死亡した女性(61)は、クマよけの鈴をつけていたが、山中で1人でいるところを襲撃されたとみられる。

 山菜、タケノコ採りシーズンは8月中旬まで続く。安全対策の基本ともいえるクマよけの鈴が通用しない場合もあるが、一体どんな対策が有効なのだろうか。クマの生態に詳しい秋田県自然保護課の担当者は「鈴は人の動きが止まると音も止まる。ラジオを大音量で流せば、音が止まることはない。また、クマは嗅覚が優れており、蚊取り線香をたくのも1つの策」と話す。

 しかし、人を恐れないクマもいる。昨年5月から6月にかけ、秋田県鹿角市でタケノコ採りの男女4人が、相次いでクマに襲われて死亡。大きな衝撃を与えた。同担当者は「もし人を襲ったことがあるクマだと、鈴などは逆に呼び寄せることになってしまう場合がある」と警告する。

 襲われないようにするための結論は「山に入らないこと」(担当者)。ただ、今の時期に採れるタケノコ「ネマガリダケ」は高値で取り引きされることもあり、警察や行政の担当者が山に入ることの自粛を呼びかけても効果がないのが現状だ。

 環境省の統計によると、クマによる人身被害は1990年代までは年間20件程度だったのに対し、近年はばらつきはあるものの、多い年には100件以上に上っている。人間と自然が“共存”する区域にあたる「里山」の荒廃でクマの生息域が人里に近くなり、クマに襲われるケースが増加していると思われる。

 山に近い地域で生活する人が減る中、野生動物に「ここからは出てこないで」と知らせる役目を、誰かが代わりに果たさないと被害は増え続ける。山里に生きる人たちをどう育てるか、どうやったら野生動物の害から市民を守れることができるのか。猟友会や警察だけに任せるのではなく、社会全体で向き合う時代に来ているのかもしれない。

続きを表示

2017年7月14日のニュース