NHKさんまで音楽番組のワケ 世代つなぐ「明石家紅白」“楽曲見られない”悩み解消

[ 2017年6月26日 07:30 ]

26日放送の音楽特番「第2回明石家紅白!」の司会を務める明石家さんま。ゆずの「夏色」の歌詞について語る(C)NHK
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 明石家さんま(61)が司会を務めるNHKの音楽特番「第2回明石家紅白!」が26日(後7・30〜8・43)に放送される。さんまの同局初の冠番組として注目を集めた第1回の好評を受け、半年ぶりの開催。「さんま×NHK×音楽」がもたらす相乗効果とは――。岩井礼プロデューサーに企画意図、制作の裏側、さんまの魅力などを聞いた。

◆30年ぶりNHK なぜ音楽?民放にない企画を

 会いたいアーティストを招いて聴きたい曲をリクエストし、トークを繰り広げる“さんま版紅白”。昨年11月24日(後7・30〜8・43)に放送された第1回は、さんまが約30年ぶりにNHKに本格出演し、話題を呼んだ。

 さんまとNHKの初タッグを実現すべく、岩井氏は放送の約2年前に始動。さんま側とは「『民放さんでやっていることを単純にNHKでやりました』だと、意味がない」が共通認識。さんまを生かす最高の舞台は――。1年半かけて企画を練り、導き出した結論は音楽番組だった。

 「さんまさんが音楽好き、というのが一番大きな理由です。昔の曲だけに偏らず、最近の曲にも本当に詳しい。さんまさんがスポーツ好きなのは有名ですが、あまり知られていない音楽通の側面を紹介できると思いました」。第1回の放送で、泉谷しげる(69)にスタッフにもなじみの薄かった「黒いカバン」という曲をリクエストしたのが一例。「そして、NHKなりの音楽番組となった時に“紅白”のイメージが合致しました。さんまさんが紅白をパロディーしたら、おもしろいんじゃないかと思いました」

◆“異例”司会者ワイプ さんま反応で楽曲に興味

 「SONGS」「ミュージック・ポートレイト」などを担当した岩井氏は、音楽番組制作にジレンマを感じていた。「今、いい楽曲をストレートに紹介しても、なかなか見てもらえません。あまり知らない曲の歌唱シーンになると、1回休憩という感じで、チャンネルを変えられることが多い。音楽番組の宿命です。新しい興味を持とうとしない時代といいますか…」

 それが、第1回を収録し「歌が終わった後、さんまさんが『ええ曲やな〜』とおっしゃるのは、アーティストにとって強い味方だと思ったんです。上の世代の曲を下の世代に、若い世代の曲を年配世代に伝える上で、さんまさんの言葉がプラスになっている。『さんまさんが言うなら、聴いてみようかな』と。つまり、さんまさんを通して、みんなが曲を知る番組になったらいいと思ったんです」。どの時代の音楽にも精通しているさんまが世代をつなぐ役割を担う。視聴対象の世代を限定しないのは、大みそかの紅白歌合戦と同じコンセプト。

 「だから、この番組は、さんまさんのリアクションが大事。例えば、年配の方々が単純に(第1回ゲストの)欅坂46を見て『こういう子たち、たくさんいるね』で終わるより、欅坂46を喜ぶさんまさんの反応を見たら、アーティストや曲に興味を持つかなと」。第1回の放送は、ゲストの歌唱シーン中に画面左下のワイプが、さんまの表情を捉えた。狙いはそこにあった。「曲が終わって、さんまさんが何を言うか。その期待感で、歌唱部分を最後まで見てほしいという戦略もありました」。さんまだからこそ、視聴者を楽曲に引き付けられる。知らない楽曲になるとチャンネルを変えられるという従来の悩みを解消する、さんまにしか成し得ない画期的な音楽番組が生まれた。

◆唯一の注文はセット「アットホームな空間がいい」

 さんまが唯一、要望を出したのがセット。当初はトークセット、歌唱ステージともスタイリッシュな感じだったが「もっとアットホームな空間がいい」。トークの流れでソファーに座ったまま弾き語りなどをしてもらうのが、さんまの最も好きなスタイル。結果、セット全体は横長の部屋をイメージ。左側のトークセットにはソファーが置かれ、右側にステージ(舞台)はなく、トークセットと地続きで、歌唱スペースといったところ。共有した空間で歌ってもらいたいという、さんまの意図を反映した。

 第1回の収録を楽しんださんまが「またやろう」と第2回開催の運びに。ゲストは第1回7組から第2回5組と減らしたものの、さんまのトークが止まらず、収録時間は変わらず4時間だった(放送時間は73分)。さんまは「(4時間が)体内時計や」と話したという。岩井氏は「また編集に困っています」と苦笑い。さんまの凄さについて聞くと「音楽番組ということで言うと、やはり“言葉の人”なんだと思います。好きな曲については、具体的な歌詞のことを言うんですよね。今回だと、ゆずの『夏色』。さんまさんは『歌詞のこの部分は、こういうふうに歌いたい』と。歌詞の意味を捉えて、音楽が好きなんだと感じます。打ち合わせでも細かいフレーズへのこだわりが随所に出ますね」と評した。

 今後については「魅力的なコンテンツになっていると自信はありますし、今、こういう形の音楽番組は他にないと思っています。さんまさんが会いたいアーティストもたくさんいらっしゃいますので、もっと続けていきたいと思っています」と展望した。第1回の番組平均視聴率は10・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と堂々の2桁をマーク。未公開トークが山盛りだった「第1回明石家紅白!拡大版」(今月9日深夜0・55〜3・00)は、視聴者が寝静まる時間帯としては驚異的な2・9%(同)。内容はもちろん、数字も好調。長寿シリーズになりそうだ。

 ◆「第2回明石家紅白!」ゲスト 宇崎竜童(71)阿木燿子(72)夫妻、三浦祐太朗(33)、森高千里(48)、ゆず、三浦大知(29)、Dream Ami(29)

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