佐藤仁美 朝ドラ常連「またか(笑)」“自由采配”演技の裏に現場からの信頼感

[ 2017年6月11日 09:10 ]

「ひよっこ」で朝倉高子役を演じる佐藤仁美(C)NHK
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 NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」で、ヒロイン谷田部みね子(有村架純)が働く「すずふり亭」のホール係、朝倉高子を演じる女優・佐藤仁美(37)。かわいい女性を敵対視するという一癖も二癖のある強烈なキャラを演じ、向島電機から舞台を移したすずふり亭で、ひときわ存在感を放っている。自身5作目の朝ドラ出演。常連だからこそ感じる現場の雰囲気や、今回オファーが来た際の意外な心境を語った。

 接客業なのに愛想が悪く、自分よりいい女に対し敵意を隠さない。ちょっと面倒くさい一面もある高子。脚本の岡田惠和氏(58)からは「まじめなんだけど基本ふざけた人という設定。(佐藤の印象の)まんまで描いたから」と説明されたという。「若さには勝てない。完敗ですから」と、いい女へのライバル心については高子とは違いがあるものの、実際に「演じる上で気を付けていることはまったくないです」と“まんま”で臨んでいる。「自分はこう見られているんだ、自分はこういうところがあるんだなって。高子をやっていて楽というか…」。まるで分身を演じるかのようなその環境を楽しんでいる様子だ。

 朝ドラ出演は5作目となる。今回オファーを受けた時の心境を「“またかっ”って(笑い)。私はお酒もよく飲むし、朝の顔ではないし。NHKって本当に変わってるなと思いました」と打ち明ける。もはや常連ともいえるが、今作はアドリブが多く求められるなど、これまでにないほど自由度があふれているという。

 すずふり亭のコックを演じる、エレキコミック・やついいちろう(42)とのやりとりでは、アドリブのオンパレード。「くだらないやりとりですけど。監督が“いやあ見入っちゃいましたよ?”って、なかなかカットをかけてくれない」。中でも佐藤の印象に残っているのが、7日放送の第57話で展開された、すずふり亭の採用面接だった。高子が、面接に来たかわいい女性を次々に不採用にするシーンだが、監督からはすべてアドリブでやるよう指示された。

 「理由をつけて“はい、ダメ?”って落としていくんですけど、だんだん断るレパートリーがなくなって、最後は“髪が長いからダメ”とか理不尽に。共演者の方が、面白いからって自分の収録後も残って見ているんですけど。こっちはもう大変でしたよ」。愚痴にも近い口調だが、その苦労さえも楽しんでいたかのよう。「こんな投げっぱなしの演出があるんだなって。誰も止めないし、ふざけてもいいんだっていう場所は初めてでした」。朝ドラでは珍しい自由な空気。その裏には、常連・佐藤仁美に対する岡田氏や監督の信頼感があるのだろう。

 収録が早く終わった時には、酒場へ繰り出しクールダウン。バラエティー番組でもすっかり「酒飲みおばちゃん」のキャラクターが定着したが、お笑いタレントとの共演では「切り返しの速さ」や「間」を学び、行きつけの東京・新宿二丁目の世界からは、ママたちの口調を役柄に生かすこともある。「芸人さんの頭の回転のよさや“間”をアドリブで使わせていただいたり、二丁目からは早口で罵倒する演技を取り入れたり」。常にアンテナは閉じない。演技の幅を広げる大事な異文化交流だ。

 これまで、朝ドラでのヒロインの親友や教師、病気の娘を持つ母親、戦争未亡人のほか、時代と場所に応じてさまざま役を演じ分けてきた。「女優として疑似結婚もできたし、妊婦役も何度かやったり、母親役で子供もできた。もう満足です」と振り返るが、いまだ縁がないのが離婚だという。「すべてクリアしてきたので、あとは離婚だけ。そうですね、ドロドロの泥沼離婚を演じてみたいです」。そう言って豪快に笑い飛ばした後、こう続けた「役者って正解がない仕事なんです。ふざけているようでも、まじめなんですよ」。答えがない中、得たものを演技に落とし込み、いまや唯一無二のバイプレーヤーに。「ひよっこ」での、清涼感たっぷりの有村との絡みはもちろん、今後の七変化ぶりから、ますます目が離せそうにない。

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