どこまでいくのか

[ 2017年5月31日 09:00 ]

藤井聡太四段
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 【我満晴朗のこう見えても新人類】将棋界驚異の新人・藤井聡太四段(14)の快進撃が止まらない。5月25日の竜王戦6組ランキング戦決勝を制し、デビュー以来黒星なしの19連勝。この数字そのものも驚異的だが、負かした相手が近藤誠也五段(20)というのも業界的には驚がくだった。

 近藤五段はプロ2年目だが、知る人ぞ知る実力者。勝率6割で一流と言われる世界で7割をゆうに超える。昨秋の王将戦挑戦者決定リーグでは羽生善治3冠を初対決で下し、一躍名を挙げた。順位戦はC級1組に昇格したばかりなのに「実力的にはB級1組レベル」と評する声もあるほど。B1と言えば郷田真隆九段、木村一基八段、谷川浩司九段ら実力者が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する別名・鬼の棲み処(すみか)だ。五段とは名ばかりで、実質八段クラスの力を持っていることになる。藤井四段はそんな強豪を打ち破ったのだから、たかが1勝とみるべきではない。

 内容的にも完勝だ。取材から一夜明け、あらためて棋譜をたどってみたら、とある事実に気がついた。自陣(後手なので1〜3段目)に相手駒の進入を許したのはわずか2回。うち1回は角交換なので攻撃されたとは言えない。2段目以降は全くのアンタッチャブルで、掛けられた王手は1度だけ。野球の投手に例えれば1安打完封、サッカーなら相手シュートを1本に抑えたうえでの零封、ってところか。

 消費時間を見てもその差は明らかだ。竜王戦ランキング戦は5時間持ち。近藤五段が4時間20分を消費したのに対し、藤井四段は3時間10分。つまり1時間50分もの余裕を残していた。

 あるシーンでは思わず「あっ」と声を上げそうになった。藤井四段の手番で、近藤五段が席を外している場面。すっと立ち上がった天才少年は記録係の後方を通って相手サイドに向かっていく。左斜め後方45度の位置でぴたりと止まり、立ったまま盤面に視線を数秒投げかけた。こ…これは…「ひふみんアイ」じゃないか!

 知る人ぞ知る加藤一二三(ひふみ)九段(77)の得意技?だ。自分側からだけでなく相手側から盤を眺めることによって斬新なアイデアを生み出そうとする「秘技」。この日の藤井四段は少なくとも2回は「ひふみんアイ」を敢行していた。加藤九段といえば藤井四段にとっては昨年12月24日のデビュー戦で対戦した相手。そんな大大大先輩の技をさりげなく拝借していたとは…。

 デビュー当初の詰め襟制服から、最近はネクタイ姿が様になっている。となると次に見たいのは、やっぱりタイトル戦での和服姿だろう。

 そんなに遠い先の話ではないと思う。 (専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。

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