【夢中論】三田佳子 スキンヘッドに貞子…変幻自在の演技「大御所になりたくない」

[ 2017年5月16日 11:40 ]

夢中論 三田佳子(下)

自らの女優観を語る三田佳子
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 東京・広尾のジムで週1度、汗みどろになりながら、体の衰えに逆らうべく筋トレに没頭する女性がいる。その人とは、NHK大河ドラマに2度主演した女優、三田佳子(75)。スエットの上から、さらに赤い短パンをはく不格好な服装で、「みっともないポーズ」を時には人目にさらしても、半年間心折れず、欠かさずに続けている。いつまでも、変幻自在で居続けるために。

 96年に子宮体がんを患ったこともあり、普段から体のケアは意識してきた。しかし転倒を機に、「やみくもにやるんじゃなく、どこが衰えたか分析して強化するという考えに変わった」と話す。

 好奇心が旺盛。「だから何でも、てらいなくやってしまう」と話す。ジムのメニューは年齢に合わせているとはいえ、苦戦するものも多い。「時々、自分がおかしくなっちゃう。フゥフゥ言いながら不格好なポーズを取って。先生と笑いながら“もう、意地ですね”って話してます」

 ジムでは自前の黒のスエット上下に加え、ジムの“制服”のブカブカの赤い短パンを上からはくという、いささか珍妙な格好。「人さまには見せられない。マネジャーにも」と笑いつつ「夢中になるって、人がどうしてるとか、恥ずかしいとか何もなく、没入するものでしょ」とほほ笑む。

 その姿は、女優としての最近の“攻めっぷり”とも重なる。「忠臣蔵の恋」では自ら特殊メークでスキンヘッドになることを提案し、局側を驚かせた。昨年の「スニッカーズ」CMでは、ホラー映画「リング」の貞子になりきり話題を呼んだ。「そういう意味では、私はやっぱり役者という仕事に夢中なんですね」。75歳になっても、守りに入るつもりは一切ない。

 「私は大御所になりたくないんです」。この言葉を強調した。「自分で“私は大御所なんだからこんなことはやっちゃダメ”と思ったときは、消えるとき。誰をも寄せ付けない雰囲気が備わってくると、末期ですね」と笑いながらも、口調は真剣そのものだ。

 主人公の母役で出演中のTBSドラマ「小さな巨人」では、ごくわずかな出番にもかかわらず、小ぎれいでひょうひょうとした独特の存在感を発揮。視聴者の間で「三田佳子がこれで終わるはずがない」「何か謎がある」と議論が起きる珍現象も発生。「あのちょこっとの場面を楽しみにしてくれていると聞くと、私の冒険心が伝わりだしたのかなって思いますね」

 鍛えた体とともに、ますます広がった奥行き。「これからもやるだけやって、若い人の中に自分が残るような仕事ができたら。それでこないだみたいにコロンと転がったら、そこでサヨウナラでいいわ」。役者に殉じる――。転んで揺らいだ心も、なお強くなった。

 ≪愛用アイテム カネヤン健康棒≫自宅での愛用アイテムは13年にテレビ朝日ドラマ「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」で共演した米倉涼子 (41)から贈られた主に肩甲骨をストレッチするための約50センチのゴムチューブとプロ野球最多400勝を誇る金田正一氏(83)から直々にもらった懐かしの「金田式健康棒」。「健康棒は何十年も身辺に置いてあって寝る前に持って体をひねったりしてます」と話した。

 ◆三田 佳子(みた・よしこ)1941年(昭16)10月8日、大阪府生まれの75歳。生後半年で東京に引っ越し、中学、高校時代からテレビ出演を重ね60年に第二東映に入社。当初から現代劇の看板女優と称される。67年にフリーに。84年の 映画「Wの悲劇」が高評価され、86年「いのち」94年「花の乱」とNHK大河ドラマ2作に主演。複数の大河主演は女性ではただ一人。

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