尾上松也「直虎」今川氏真の“歴史に隠れた功績”明かす プリンスの苦悩も表現

[ 2017年5月7日 08:00 ]

大河ドラマ「おんな城主 直虎」で今川氏真を演じる尾上松也(C)NHK
Photo By 提供写真

 歌舞伎俳優の尾上松也(32)がNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(日曜後8・00)にレギュラー出演。戦国武将・今川義元(春風亭昇太)の嫡男、今川氏真に挑戦している。乱世の真っ只中で生まれ、今川家を滅亡に導いた張本人とされるが、松也は歴史に隠れた氏真の功績があったという。32歳で自身4度目となる大河。役柄への熱き思いを語った。

◆32歳で4度目の大河、現場は「祖父母の家に来たような懐かしい感じ」

 大河初出演作「八代将軍 吉宗」(1995年)で徳川吉宗の幼少期役を演じ、その後「葵 徳川三代」(2000年)の片桐元包役、「天地人」(09年)の前田利長役を経て今作で4度目の大河。「子供のころに出た『吉宗』の思い出が、今も鮮明に残っているので、NHKのスタジオに来ると祖父母の家に来たような懐かしい感じがします。あのスタジオで仕事ができるということが嬉しかったです」と馴染み深い空間に戻ったことを喜んだ。

 今川家のプリンスとして生まれ育ち、「甲相駿三国同盟」成立のため北条氏康の娘と結婚。家督を継承するも桶狭間の戦いで偉大な父・義元が戦死。義元の死後は祖母・寿桂尼(浅丘ルリ子)の後見を受け今川家存続を目指したが、家臣の離反が相次ぎ武力は弱体化する。

 戦より文化や風流を愛する人として描かれる氏真について「文化的なことには長けていましたが、軍事面の才能が乏しかった。僕なりに勉強した中でいいますと、氏真自身がそうなることを望んだわけではなかった」という。「父・義元の教育方針が影響しているのかなと。義元には太原雪斎という名参謀がいた。自身と雪斎の関係を、氏真と竹千代(のちの家康)に置き換えていたようで、雪斎の働きを家康にさせて氏真は自由奔放にと考えた。そのため、氏真が軍人としての素養を築く機会が少なかったのではないかと思います」と自身の解釈を語った。

 今川家の全盛期を築き上げた「ばば様」寿桂尼を頼りにするが、次第に心境の変化が起きる。「前半は父を失い『ばば様』が支えだった。そこから年月を重ねて“自分が頑張らないといけない”という自覚を持った時に、やはり『ばば様』には及ばないと感じる。寿桂尼の的確で鋭い指図などに対して、(氏真の中に)嫉妬めいたものが出てくる。寿桂尼の存在が頼りになるが重荷にもなるといいますか。ですが、寿桂尼なしで今川家は成り立っていなかったので、氏真はコンプレックスのようなものを抱えた人になってしまったのでは」と氏真の複雑な胸中を代弁する。

◆「明治まで名が残ったのは氏真だったからこそ」現代人に相通ずる生き方

 氏真は今川家を弱体化させた張本人というレッテルを貼られたが、松也は氏真だからこその功績があったと唱える。「今川家がつぶれたというのは戦国武将としての今川がつぶれたということ。明治時代まで今川の名が残ったことを考えると、氏真が軍力に優れていて血眼になって父上の敵を探していたら、きっと清洲城で家康に追い詰められ、織田信長に攻められた時に殺されていたと思います。ですが、氏真は殺されなかった」

 「弱いから相手にされなかったのかもしれませんが(笑い)、簡単に言いますと武力の才があったら確実に今川家はなくなっていたと思います。明治まで名が残ったのは氏真だったからこそだと思います」と評し、「戦国時代は誰しもが野望を抱き、全国統一したいと思っている。味方や親が殺されたら敵討ちをするのが当然の中で、氏真は凄く純粋に生きている。そういう欲がなく生きられるというのは、考えようによっては先進的だし、現代的な考え方の人かなと。争いを好まないところも含めて、現代の人々の考えに相通ずるものがあるかなと思います。彼の苦悩と生き方というのは、現代を生きる人たちに何か突き刺さるものがあり、同情を得られる気がします」と持論を展開した。

◆楽しい現場、ムロツヨシに褒められた所作「松也なにそれ!綺麗」

 歌舞伎俳優としての技能は現場でキラリと輝く。「現代ドラマより時代劇のほうがやりやすい感覚があります」と言う通り、衣装の着こなしや自然体でこなす所作の美しさは共演者が舌を巻くほど。7日放送の第18話「あるいは裏切りという名の鶴」でムロツヨシ演じる豪商・瀬戸方久が、駿府の今川館で氏真に鉄砲「種子島」を売る場面。「意識していなかったのですが、書状を読むリハーサル場面でパッと開いたらムロさんが“松也なにそれ!いまの凄く綺麗だったなあ!”と(笑い)。何のことかと聞きましたら、書状を見るときに、一度捌(さば)いてから見ていたと。歌舞伎では当たり前のことなのですが、ムロさんは“一枚一枚折り目を直して開いたらダメだ”と言われたそうです。板についているといいますか、歌舞伎では先輩たちに教えていただくので自然にできるのですが、そう言われると不思議なもので…。逆に意識してしまい、本番では不自然になってしまいました」と明るく撮影秘話を明かす。慣れ親しむ時代劇で楽しく、真剣に“新・氏真”に挑んでいる。

続きを表示

2017年5月7日のニュース