「プレイボール」初回からヒット!コージィ城倉氏で40年越し“継投”

[ 2017年5月7日 06:30 ]

「グランドジャンプ」4月5日発売号で描かれた「プレイボール2」第1話の扉絵。谷口タカオ主将(左)と田所前主将(C)ちばあきお・コージィ城倉/集英社
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 故ちばあきお氏の名作野球漫画「プレイボール」が漫画誌グランドジャンプ(集英社)で39年ぶりに連載を再開し、話題になっている。「グラゼニ」などの野球漫画で人気のコージィ城倉氏が描いている。別の作家が物語を引き継いで再開するのは、おそらく漫画界初。城倉氏は「ちば氏になり切って描く」とタッチやコマ運びを分析し、ストーリー作りに頭を悩ませている。

 続編は「プレイボール2」のタイトルで、先月5日発売のグランドジャンプで連載開始。ここまで3話を掲載している。“未完”の作品を別の作家が描くのは極めて異例。編集部によると「例が思い浮かばない」という。城倉氏は「スピンオフの形を取らず、いかにもちば先生が描いたかのごとく挑戦している。そんな漫画はないでしょう」と話す。それでも「続編を待ち望む人の期待に応えたいモチベーションはあっても、重圧はない」と気負っていない。

 ちば氏のコマ運びを徹底研究し「例えば投手と打者を一緒に描くようなロングのコマが多い。今なら2コマにして1人ずつアップで描く方が多いが、ロング1コマの方がプレーの流れが分かりやすい」と分析。ロングのコマが並ぶことも多く「ちば先生は同じ人を何回も描いたり非常にちまちま、きっちりした絵を描いていた」と驚きつつ再現している。

 ちば氏の絵柄を「筆圧の強弱が伝わる、キレイで迫力ある線で描かれている」と絶賛。単純に見えるが描くと難しく「(主人公)谷口がなかなか似ない」と弱音も出る。プレイボールは中学野球を描いた名作「キャプテン」に登場する谷口主将の高校進学後の物語。弱小野球部の成長を丁寧に描写し、週刊少年ジャンプで1978年まで連載。谷口が3年生に進級直後の練習試合に完敗して終了した。ちば氏は続きを描く意向だったとされ、読者も待ち望んでいたが84年に41歳で急逝した。

 今作は、その最終回の直後から再開。ストーリー作りは「ちば先生ならどう考えるかを考えている。何度も頭の中でストップが掛かり、普段の何倍も疲れる」という。甲子園出場を決めるのが“野球漫画の王道”だが「敗北の美学を描いた作品。勝てばいい物語ではない。どこで負けさせるかを考えている」という。

 いずれ自身の作家性が隠せなくなるとも感じている。「ちば先生のものとは離れていくだろう。それでも読者が良い意味で“ちば先生の作品”とだまされてくれたらうれしい」。2人の作家性が溶け合い“ちば氏もこう描いたはず”と思える作品になったとき、過去に例のない名作となるかもしれない。

 ▼「キャプテン」「プレイボール」 墨谷二中野球部の成長を、谷口→丸井→イガラシ→近藤の4代にわたるキャプテンを主人公に描いたのが「キャプテン」で1972〜79年、月刊少年ジャンプで連載。谷口の墨谷高進学後を描いた「プレイボール」は73年から連載。谷口が3年の春、丸井、イガラシもそろい甲子園出場へ物語の盛り上がりが期待されたが終了した。

 ◆ちばあきお 1943年1月29日、旧満州国奉天生まれ。兄で漫画家ちばてつや氏のアシスタントを経てデビュー。77年「キャプテン」「プレイボール」で小学館漫画賞受賞。「チャンプ」連載中の84年死去。

 ◆コージィ城倉(こーじぃ・じょうくら)1963年、長野県生まれ。「おれはキャプテン」など野球漫画を多く手掛ける。森高夕次名義で漫画原作も担当、プロ野球を描いた「グラゼニ」は13年度講談社漫画賞を受賞、来年アニメ化される。

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2017年5月7日のニュース