作品賞「ムーンライト」奇跡の配役!主人公に“同じ目”を持つ3人を発掘

[ 2017年3月11日 08:30 ]

アカデミー賞作品賞に輝いた「ムーンライト」で主人公を演じる“同じ目”を持つ3人(左からアレックス・ヒバート、アシュトン・サンダース、トレヴァンテ・ローズ)(C)2016 A24 Distribution,LLC
Photo By 提供写真

 第89回アカデミー賞作品賞に輝いた映画「ムーンライト」(31日公開)は主人公の10歳から30代前半を描き、少年期、青年期、成人期を3人の俳優が演じ分けているが、“同じ目”を持つ3人が奇跡的にキャスティングされた。バリー・ジェンキンス監督(37)らが発掘秘話を明かした。

 劇作家タレル・アルバン・マクレイニーの戯曲「In Moonlight Black Boys Look Blue(月の光の下で、美しいブルーに輝く)」を原案したジェンキンス監督の長編2作目。マイアミを舞台に、自分の居場所を探し求める主人公シャロンを描く。俳優のブラッド・ピット(53)がプロデューサーを務め、自身が創設したプランBエンターテインメント製作。LGBT(性的少数者、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字)をテーマにした作品としてアカデミー賞作品賞を初受賞した。

 ジェンキンス監督は「同じフィーリング、同じ雰囲気、同じ要素を持つ俳優を探そうと思った」と明かす。目は映画における“観客のための窓”と捉え、同じ雰囲気の目を持つ3人を探したという。

 少年期を演じたのはアレックス・ヒバート。監督はマイアミ中をくまなく歩き、出演者募集のチラシを張るなど、重大な役を演じられる少年を探した。最終的に監督とキャスティング・ディレクターのヤシ・ラミレス氏はヒバートを見つける。同氏はオーディションでヒバートの幼い目に映る物静かな好奇心と脆弱性に強く惹かれた。

 青年期を任されたのはアッシュトン・サンダース。同氏は全国を回り、オーディションテープや顔写真をはじめ、インターネットで高校の演劇プログラムを終了した生徒のビデオクリップを探し回った。サンダースは、同氏がロサンゼルスで行った数多くのオーディションで発掘。インディペンデント映画への出演歴があり、静けさと不屈の精神を兼ね備えた第2章の主人公に打ってつけだった。

 成人期はルイジアナ出身の陸上競技界のスター、トレヴァンテ・ローズが担当した。もともとは主人公の同級生ケヴィン役のために呼ばれたが、筋肉隆々で男っぽく、街に精通する大人の主人公に適任ということに誰もが気づいた。同氏は「キャスティングディレクターとして、すぐ強烈に“これだ”と思うことはあまりないことないのに、彼は特別だったわ」「男らしい風貌に加え、彼は観客がキャラクターに対して何か感じる弱さを持ち合わせていたの」と絶賛した。

 3人の主人公は継ぎ目なく3つの章でつながっているが、ヒバート、サンダース、ローズの3人は監督の指示により、撮影中に会うことはなかった。同氏は「私たちがラッキーだったのは、それぞれのパートに最もふさわしい俳優を見つけられたことよ。3人には3つの違った時期を一貫して流れる、内なる脆弱性という共通の特徴もあったのよ。それぞれの俳優は、それを目で表現できて、あのキャラクターの人生の完璧な映画を作るのを助けてくれたわ」と振り返っている。

 2月26日に行われた授賞式で、いったん「ラ・ラ・ランド」(監督デイミアン・チャゼル)と発表され、スピーチ中に訂正が入る前代未聞のハプニングの末に作品賞の栄誉。当初、日本公開は4月28日の予定だったが、「少しでも早く劇場で鑑賞したい」という声に応え、異例の1カ月前倒しロードショーとなった。

続きを表示

2017年3月11日のニュース