「バイプレイヤーズ」松居監督が語る名脇役6人の凄み「寄りで撮れない」

[ 2017年3月10日 09:00 ]

夢の共演が実現した名脇役6人(左から松重豊、遠藤憲一、光石研、寺島進、田口トモロヲ、大杉漣)。松居大悟監督がその凄みを明かす(C)「バイプレイヤーズ」製作委員会
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 日本映画界に不可欠な名脇役6人による奇跡の共演で話題を呼ぶテレビ東京「バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」(金曜深夜0・12)は10日深夜に第9話と終盤戦に突入。メーン演出を務めた新鋭・松居大悟監督(31)に6人の魅力、撮影秘話を聞いた。

◆「全員がおもしろいから、グループショットで」

 遠藤憲一(55)大杉漣(65)田口トモロヲ(59)寺島進(53)松重豊(54)光石研(55)=アイウエオ順=の6人が“主演”。全員が本人役に扮し、共同生活を送るというストーリーの異色作。ドリマックス・テレビジョンの浅野敦也プロデューサーによると「松居監督は、この6人と全く仕事をしたことがなかった。だから、新しい魅力を引き出してくれるんじゃないかと。お互い、手の内が全く分からないところから、緊張関係で進められる。この6人は数え切れないほどの作品にご出演されているので、ある程度のものに関しては既視感があると思うんです。新しいチャレンジをしたい方々ばかりなので、松居監督とのタッグも1つのチャレンジになればいいと思いました」と抜擢された。

 松居監督は第1話、第2話、第5話、第8話、第11話、最終回の演出を担当。6人の凄さについて「脚本の想像を遥かに超えてくるんです。1人が脚本を超えてくるだけでも凄いのに、それが6人になった時は本当に凄いパワーになります」と証言する。

 先週3日深夜放送の第8話「バイプレイヤーとキー局制覇」。映画「七人の侍」のリメークは4カ月前に頓挫していたことが分かり、6人はバラバラに。6人による10年前の映画「バイプレイヤーズ」のフィルムを盗んだ犯人を探すため、企画が流れたことを隠していた大杉は、責任を痛感。大杉は仕事ぶりで信頼を取り戻そうと、4月クールの全局ドラマに仕事を入れるが、過労のため倒れる。残り5人が大杉の代役を務め、6人は久しぶりに千葉・館山のシェアハウスに集まる。

 館山に残りたい5人は、大杉が引き留めるのを待ちながら、ゆっくりと帰る素振り。「最初に段取りをした瞬間、6人の空気がもう1つになったんですね。プラス、1人1人のゆっくりの歩き方も全員少しずつ違っていて。本当に全員がおもしろいことをしているので、全員を収めないといけないから、寄りで撮れないというか。それは第1話の時から思いました。セリフを言う人以外、聞いている人も全員おもしろいとなると、グループショットで行くしかないと。6人の今、その瞬間をいかに切り取るかを大切にしました」

◆「編集の時に気付いて驚く演技がたくさんあります」

 撮影現場で気付かなかった細かい演技を、編集作業中に見つけることもあるというから驚き。第1話「バイプレイヤーとシェアハウス」。松重は寺島のものとは知らず、冷蔵庫のプリンを食べる。シェアハウス2階踊り場で、寺島と田口がケンカ。寺島は「コイツ(田口)がね、いきなり素っ裸で、オレの部屋に入ってきたんですよ」「(中略)アンタとはやっていられないよ、ホントによ。コイツ、オレのプリンも食ったんですよ」。大杉と1階のリビングにいる松重はプリンを背中の後ろに隠す。すると、今度はリビングで遠藤と光石が言い争い。4人がああだこうだと言っていると、寺島と田口が2階から降りてくる。寺島は大杉と松重の間、松重の右側に立ったため、松重は左手でプリンを持ち、寺島から見えない角度で保っている。

 「セリフや話の展開を見ていたので、松重さんの細かい動きは現場で気付きませんでした。編集の時に気付いて驚くことがたくさんあります。寺島さんと田口さんの言い争いの流れのところで『松重「(言うに言えずカップを隠して)…』のト書きはあるんですが、その後はご本人に埋めていただく感じ。その後(第1話ゲストの)役所広司さんの話題になり、松重さんは『(役所への)プレゼント、どうします?』『ケーキ、作りますか?』とセリフがあるんですが、その間も左手だけはプリンを隠す芝居をなさっている。あそこは凄かったです」

◆早くも再共演アイデア「七人の侍」?「荒野の七人」?

 松居監督にとっては「これからの創作活動が変わると思います。『バイプレイヤーズ』の松居さんと言われたら、誇らしいです」という大きな経験。2月6日にクランクアップし「長く付き合い、深いロマンスの恋愛をして、劇的に別れたみたいな。凄く寂しいです。編集中は昔の好きな人の写真を眺めているような、不思議な状態です」と表現した。

 同中旬に行われた打ち上げの際、最年長の大杉は6人の再共演について「皆さんがやるというならば、僕らも応えたいと思っています。ただ1つだけ条件があります。今ここにいる同じスタッフでやってほしい。僕らも足りないところがありますが、補おうとします。このスタッフも足りないところがありますが、いいところも凄くあります」とあいさつしたという。その言葉に、松居監督は「泣きそうになった」といい「また6人と仕事させていただけるなら、絶対やりたいと思います」。打ち上げの際も「七人の侍」や「荒野の七人」をモチーフにした再共演のアイデアで盛り上がったという。

 今回は、6人を特集した2002年秋の映画祭「6人の男たちフィルムズ」(東京・下北沢)から14年越しで共演が実現。「夢の共演、再び――」を期待しながら、最終回まで見届けたい。

 ◆松居 大悟(まつい・だいご)1985年11月2日、福岡県生まれ。2009年、桜庭ななみ(24)が主演を務めた「ふたつのスピカ」でNHK最年少のドラマ脚本家デビュー。12年、松田翔太(31)主演により人気漫画を映画化した「アフロ田中」で長編デビュー。映画「ワンダフルワールドエンド」(15年公開)はベルリン国際映画祭に出品され、映画「私たちのハァハァ」(15年公開)はゆうばり国際ファンタスティック映画祭2冠に輝いた。昨年12月には蒼井優(31)主演の映画「アズミ・ハルコは行方不明」が公開。枠にとらわれない作風は国内外から高く評価され、劇団「ゴジゲン」主宰、ミュージックビデオ制作、コラム連載など活動は多岐に渡る。

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