阿部寛 “理系脳”で導き出す役者人生の公式 年月重ねた“足し算”の美学

[ 2017年1月24日 11:00 ]

夢中論 阿部寛(上)

クールにポーズを決める阿部寛
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 俳優デビューから30年を迎えた阿部寛(52)。映画やドラマに引っ張りだこの人気者を支えているのは“理系脳”だ。セリフ覚えや役づくりは効率を考え、カメラワークも計算。浮き沈みがあった俳優人生でも、自分なりの公式を見つけ、解を導き出してきた。今、60歳を見据え、新たな役を開拓しようと戦略を練っている。

 子供の頃から数学が得意で、宇宙に関わる仕事を夢見て中央大理工学部電気工学科に進学。「何に対しても飽きないタイプ。車も頻繁に取り換えず乗りつぶすんです」。大学在学中に「ノンノボーイフレンド大賞」で優勝賞品として手にしたマツダの車も3年で乗りつぶした。父も兄もエンジニア。一つのことをとことん極める職人気質を色濃く受け継いでいる。

 数年前からはまっていたのが、レーザーで距離を測る測定器。自宅を建てる時のために天井の高さや間取りなどの参考にしようと持ち歩き、撮影などで気になる建造物を見つければ測定。「明治時代に建った建物とかは空間をよく生かしてる。“このくらいだとこうなるのか”と自分なりに考えてました」。15年の主演ドラマ「下町ロケット」の撮影で使った工場にも萌えた。「工場は凄く好き。何十年も働いてきた機械を美しいと思うんです」。使い込み、年月を重ねた“足し算”の中に美学を見いだす。

 理系の思考は仕事でも生かされる。出演作が立て続く中、セリフ覚えは時間と効率を重視。「“いつまでにここまで覚えよう”と計画を立てて、計算しながらやります」。覚えるのはたいてい入浴中。「空間として閉じ込められて余計なことを考えない。ここまでやらないと今日は出られないと決めて、拷問みたいな状況にします」。さながら、受験勉強で数学の問題に向き合った時のように自分を追い込む。

 役づくりでも計算が一役買う。主演映画「恋妻家宮本」(28日公開)では、普段はやらない料理のシーンの撮影に向け「カメラの動きを計算しながら、包丁さばきとか全て段取りを決めました」。

 ◆阿部 寛(あべ・ひろし)1964年(昭39)6月22日、神奈川県出身の52歳。83年に「ノンノボーイフレンド大賞」で優勝し、雑誌「メンズノンノ」の創刊から3年半表紙を飾る。87年に映画「はいからさんが通る」で俳優デビュー。93年のつかこうへい氏の舞台「熱海殺人事件」で評価され、テレビ朝日のドラマ「トリック」シリーズがヒット。08年「歩いても 歩いても」「青い鳥」で毎日映画コンクール男優主演賞、12年「テルマエ・ロマエ」などでブルーリボン賞主演男優賞を受賞。来年公開の日中合作映画「空海 KU―KAI」にも出演。1メートル89、75キロ。血液型A。

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