本木雅弘 もがいた役作り…もがく主人公に投影し2度目の男優主演賞

[ 2017年1月19日 05:30 ]

2016年毎日映画コンクール

男優主演賞に輝き笑顔を見せる本木雅弘
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 「永い言い訳」の本木雅弘(51)が2度目の男優主演賞を射止めた。

 初顔合わせの西川美和監督(42)や竹原ピストル(40)をはじめ「完璧」と称えた共演者たちに感謝しながら、本木は喜びをかみしめた。

 「監督は“一つでも二つでも出てもらった役者に新しい発見をしてもらわないと自分が仕事をしたことにならない。だから本木さんが評価されたことは自分のこと以上にうれしい”とおっしゃってくれました。(賞は)監督と共演者から醸し出された化学反応で生まれた宝です」

 「中国の鳥人」以来、18年ぶりの主演賞。西川監督が自らの直木賞候補作を映画化した作品は、ゆがんだ自意識を抱える流行作家がバス事故で妻を失うことから始まる人間ドラマだ。「映画と小説は別物」と監督から原作を読むことを止められたが、本木は「役作りの栄養のために」とわがままを言って目を通した。

 ところが、プロモーションの段になっても原作にすがりついた本木に対して「西川監督は“小説の中に模範解答があるわけじゃない”と言うんです。役者としても人間としても、生々しい時間に翻ろうされる私をもっと切り取りたかったんじゃないかな。逆に私は一生懸命、物語の中に収めようとしてしまった」

 かつて演出家の久世光彦さんから教えられたように、いざとなれば用意してきたものを捨て去る“余白”を残しての現場だったが、素直に反省するところが本木らしい。西川監督も「こだわっているようでどこか詰めが甘い」と、いとおしく見つめていたようだ。

 世代を超えて寄せられた共感の声は格別。「これは喪失から始まって、一人の人間が再生していく感動物語ではない。変われない自分に永遠に苦しんでいく主人公が、そんな中でも、1ミリでも心を成長させていく話。見てくれた人はそこに希望を感じてくれたのでは」

 本木も51歳になった。「義母の樹木希林さんが言うように、ようやくその人なりのほころびが出せるようになってきた。それが役者としての味わいにもつながっていく。これからもひるまずに面白がって(身を)さらしていきたい」

 そう言ってモックンは前を見つめた。

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2017年1月19日のニュース