筒井真理子が女優主演賞 8年経過表現のため13キロ増量

[ 2017年1月19日 05:30 ]

2016年毎日映画コンクール

女優主演賞に輝いた筒井真理子
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 女優主演賞は「淵に立つ」の筒井真理子が初受賞した。

 「淵」ではなく、堂々と「ど真ん中」に立ってみせた。初の主演賞に筒井の表情も自然とほころぶ。

 小さな町工場を営む夫婦と一人娘の平凡な家族の前に、夫の知人である前科者が現れて始まる心震える物語。心をかき乱され、次第に絶望の淵に追い込まれていく妻の役は圧巻だった。

 深田晃司監督(36)が練りに練り上げた作品との出合いに感謝する。「素晴らしい台本。映画が描く8年間の澱(おり)のたまり方、時間の重さを表現できなかったら、この映画は終わるなと思って」と、「太ること」を監督に提案し肉体改造に挑んだ。撮影の前半と後半の間の3週間で何と13キロも増量。「炭水化物が太りやすいというので、夜の11時すぎに近所の中華料理店に通って担々(たんたん)麺と水餃子(ギョーザ)を注文しスープまできれいに食べ続けた」と明かしたが、この女優魂が作品にも重みも厚みももたらした。

 心の隙間に入り込んでくるのが浅野忠信(43)演じる得体の知れない男。「顔合わせの時、浅野さんがタイトルを見て“役者はコレ。毎日、淵に立つだよね”とおっしゃった。同志と思いました」と笑顔。夫役の古舘寛治(48)とはワークショップでちょっとした演技論を戦わせたそうで、「付かず離れず、映画でもこの距離感がいいと思った」と実践し、見事な相関関係を構築させた。

 昨年5月のカンヌ国際映画祭では作家性の強い作品が集う「ある視点」部門で審査員賞を受賞。15年ほど前に他界した母が作ってくれた着物姿でセレモニーに臨んだ。「渋すぎると思いましたが、こんなところで役に立ってくれて」と感慨深げだ。

 早大で鴻上尚史(58)主宰の劇団「第三舞台」の看板女優として活躍。卒業後は映画、ドラマと映像の世界でも確かな存在感を示してきた。年下の深田監督との仕事は刺激になった。「こういう噛(か)み応えのある作品を多くの人に見ていただきたい。若い人もタフになるわよ。あっ、何かおばさんみたい」と笑いながらエールを送った。

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2017年1月19日のニュース