名脇役6人が14年越しの共演「バイプレイヤーズ」なぜ奇跡は実現したか

[ 2017年1月12日 08:00 ]

14年越しの共演が実現した名脇役6人(左から松重豊、遠藤憲一、光石研、寺島進、田口トモロヲ、大杉漣)(C)「バイプレイヤーズ」製作委員会
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 日本映画界に不可欠な名脇役、遠藤憲一(55)大杉漣(65)田口トモロヲ(59)寺島進(53)松重豊(53)光石研(55)=アイウエオ順=の6人が“主演”を務めるテレビ東京「バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」(13日スタート、金曜深夜0・12)。6人が本人役を演じ、共同生活を送るという設定の異色作は早くも話題沸騰になっている。“奇跡の共演”はいかにして実現したのか。企画したドリマックス・テレビジョンの浅野敦也プロデューサーに聞いた。

 時は14年ほど前にさかのぼる。2002年秋、東京・下北沢で、ある“映画祭”が開催された。「6人の男たちフィルムズ」。当時、既に個性派として第一線を走っていた6人それぞれが選んだ出演3作品、計18本を10〜11月の6週間にわたって上映した。

 また10年後に会おう――。いつか、この6人で映画を――。

 10年後の12年。週刊誌の対談企画で、6人は再び集まった。翌13年、浅野氏が偶然その記事を読んだ日、松重のマネジャーにたまたま会った。記事に感銘を受け「素晴らしい記事でした。この凄い俳優6人で是非とも映画を撮られたらよろしいんじゃないですか?」と伝えた。松重のマネジャーは「なかなかタイミングが合わないんですよね」。浅野氏は「それなら、僕がやってもいいですか?」と冗談半分ながら、企画を考え始めた。

 個々に仕事をしたことはあった浅野氏だが、6人の共演となると…サスペンスなのか、コメディーなのか、ヒューマンなのか、頭をひねり続けた末にたどり着いたのが「この方々の一番の魅力は何かと考えたら、もう、この方々自身じゃないか」だった。「この方々に何かの役をお願いするより、この方々そのものに登場していただきたいと思ったんです」。引く手あまたの6人のスケジュールを同時に押さえられるかが問題だったが、14年前から「いつか、この6人で映画を――」の思いがあることから、浅野氏は可能性があるのでは?と考え、出演交渉を進めると「6人の皆さんに喜んでいただいて、スケジュールを空けていただきました」。ここに“夢の共演”が実現した。

 設定の妙が期待感を倍増。6人は本人役を演じる。海外の動画配信サイトから大型ドラマのオファーを受けた6人の名脇役。演出を手掛ける世界的な有名監督は「役作りで絆を深めるため、シェアハウスで3カ月の共同生活を送る」ことを要望。“おじさんだらけのテラスハウス”が始まる――。

 「6人の顔写真を見ながら、ずっと考えていました。この6人が揃ったドラマを作る時、何がベストか。6人の魅力が一番の肝。そこから、企画をシェイプし、引き算していくと、役者人生も含めたご自身が一番の魅力じゃないか。6人が本人役を演じたら、おもしろいんじゃないか。何役?本人役という方が、『劇中の仕事場』でいろんな役を演じていただけるし、視聴者の皆さんにシンプルに何かが起きそうと期待していただけるんじゃないかと思いました。設定を思いついた時は『これで見えた』という感じはしました。どんな話になるかは、まだ分からなかったですが、そうすること(本人役)によって、おもしろくなると思いました」

 脚本は、劇作家・ふじきみつ彦氏(42)らを抜擢。ふじき氏は「シティボーイズ」「muro.式」などのコント系の舞台やNHK Eテレ「みいつけた!」などで活躍。巧みな会話劇は第1話の冒頭から展開される。本人役については、例えば遠藤が心配性などリサーチした本当の部分もありながら、あくまでドラマとしてカリカチュアするなど、実際の本人とは異なる部分もあるキャラクターに仕上げた。

 メーン演出は、映画「アズミ・ハルコは行方不明」が公開中の新鋭・松居大悟監督(31)に託した。浅野氏は「松居君はこの6人と全く仕事をしたことがなかった。だから、新しい魅力を引き出してくれるんじゃないかと。もちろん、6人と仕事をしたことがあるベテランの方がチーフで付いた方が安心かもしれませんが、全くの未体験の『初めまして』から入るというのも、おもしろいんじゃないかと思いました。お互い、手の内が全く分からないところから、緊張関係で進められる。この6人は数え切れないほどの作品にご出演されているので、ある程度のものに関しては既視感があると思うんです。新しいチャレンジをしたい方々ばかりなので、松居監督とのタッグも1つのチャレンジになればいいと思いました」と起用理由を説明した。

 アピールポイントを聞くと、浅野氏は「50代、60代に入っても、なおトップランナーの6人の皆さん。この世代になっても、皆さん、挑戦者なんです。次は何をやれば一番おもしろいのか、常に探り続けていらっしゃる。深夜の緩い時間帯ですから、クスクス笑ったりしながら見ていただきつつも、視聴者の皆さんには、既に高みのレベルに到達した卓越した技術者が熱いハートを持ち続け、そこから、さらにチャレンジしようとしている姿を感じていただきたいです」と訴え。俳優&スタッフ一丸の挑戦が実を結ぶに違いない。

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2017年1月12日のニュース