「シン・ゴジラ」大ヒット!20年東京五輪の開会式登場もある!?

[ 2016年8月22日 08:00 ]

世界100カ国・地域への配信が決まった映画「シン・ゴジラ」のワンシーン

 世界で有名な日本のカルチャーアイコンをどういう形で再構築するのか。この難題を映画「シン・ゴジラ」で庵野秀明総監督が見事にやってのけた。評判が評判を呼び、興行収入50億円を超える勢いで今年の邦画No・1は間違いなし。14年のハリウッド版「GODZILLA」は怪獣が戦う王道モノだったが、今作は巨大不明生物が上陸したら、どう日本政府は対応するのかというリアルなシミュレーション。原点に帰りながら世界に通用する作品に仕上げた。

 ゴジラは、そこに存在するだけで怖い。住宅街で舞い上がる瓦礫。逃げ回る人々。破壊され崩れ落ちるビル群。政府は対応に追われ会議を積み重ねる。自衛隊が攻撃するにも特別立法の制定が必要であることをセリフに盛り込むなど現実を見据えた内容。自衛隊員や状況説明のための閣僚のセリフも様々な検証の下、作られている。小さな真実を積み重ねることで“虚構”を「今そこにある危機」に感じさせる。

 庵野氏らしく実写版エヴァンゲリオンといえる構図も多い。目的不明で突如現れるゴジラはエヴァに出て来る人類の敵「使徒」そのもの。出演者のアップを多用しているところも似ている。戦車群の攻撃シーンなど特撮描写も細かい。ゴジラと川を挟んで対峙し、発砲した後に反動で戦車が動くところなんか特撮ファンからすれば鳥肌ものだ。

 ゴジラのデザインは禍々しい。体高118・5メートル、頭も小さく巨大感をあおる。三白眼で見下ろしているのも怖い。1954年の初代ゴジラの頭は、きのこ雲のイメージを取り入れているが、今作も角度によってはそのように見える。これまでの着ぐるみとは違い、フルCGというのも興味深い。ただ、顔のアップでは一見ギニョール(パペット人形による特撮)かと思わせるシーンもある。そこは古き良き特撮に対する庵野氏のこだわりなのかもしれない。

 これからもゴジラは続く。アニメ版が17年、ハリウッド版の続編が19年、ゴジラVSキングコングが20年の公開を待つ。世界で愛されるキングオブモンスターであるだけに、東京五輪の開会式の演出で登場することも十分ありうる。映画「クローバーフィールド」「パシフィック・リム」などここ数年、世界に押されていた怪獣作品。庵野氏により“ニッポンの空想特撮”健在を世界に指し示した。(記者コラム)

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