ひばりさん未発表音源40年ぶり見つかる 29日にCD発売

[ 2016年5月21日 05:30 ]

29日に発売される「さくらの唄」のジャケット

 不世出の歌手美空ひばりさん(享年52)の未発表音源が、40年ぶりに発見された。1976年(昭51)に発売した「さくらの唄」を、ギター伴奏のみで歌ったバージョン。生誕記念日の今月29日にCD発売される。

 生誕日に毎年商品を発売しており、今年は同曲のシングル発売が決まっていた。2月初旬にレコード会社の担当者が、76年5月に録音されたマスターテープを確認。すると、原曲とは別のギター伴奏バージョンが録音されていたことが発覚。急きょこのバージョンでの発売へと切り替えた。

 原曲はギターの演奏で始まり、最後はフルオーケストラへと演奏が広がっていくもの。それに対し、今回の曲は最後までギター一本。ひばりさんの歌声がより際立っている。

 ♪何もかも僕は なくしたの 生きてることが つらくてならぬ――。同曲は作詞家なかにし礼氏(77)が実兄の膨大な借金を肩代わりした際に書いた詞。「借金を返しても返しても大変で、疲れ果てたときに書いた遺言のような歌。死を恐れつつも死に憧れた歌」(なかにし氏)といい、生から死へと逃げようとする男の気持ちがつづられている。

 曲をつけた作曲家の三木たかし氏が自ら歌い、70年に発売。ヒットしなかったものの、この曲を知った演出家の久世光彦氏がTBSでドラマ化を企画。その主題歌として、ひばりさんに同曲の歌唱を依頼した。曲を聴いたひばりさんはポロポロと泣きながら口ずさみ、「歌わせていただきます」と引き受けたという。

 久世氏は著書で「言い訳めくが、あまり良すぎてもレコードというものは売れないのである」とし、同曲を「私は美空ひばりの絶唱だったといまでも思っている」と評した。ヒット曲ではないが、必聴の一曲である。

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