桂歌丸 79歳の名人芸 普段は車椅子でも高座ではシャキッ!

[ 2016年4月10日 10:15 ]

79歳の今も高座に上がり続け、客席を魅了する桂歌丸

 落語家の桂歌丸(79)が今年で芸能生活65年を迎える。レギュラー出演する「笑点」も丸50年。区切りの年で高座にも注目が集まるが、昨年は2カ月近い長期入院を経験し、体調は万全とは言えない状態だ。それでも高座に上がり続ける人気落語家の気構えを聞いた。 

 やはり「桂歌丸」ののぼりが表に立っていると客の入りは格段にいい。3月の池袋演芸場は立ち見客がびっしり出るほどの超満員だった。

 昨年6月に腸閉塞(へいそく)などで長期入院して、体重は36キロまで落ちた時もあった。元々食は細くて40キロ台の体重。「疲れたらご飯のにおいがムッとくる」ので、そんなときは食べない。腸閉塞の原因も「あまりに食べないから腸がくっついちまった」というのだから笑うに笑えない。現在は意識的におかゆなどの食事を取るようにして、体重も40キロ台に回復している。「そうじゃないと大好きな高座でお客さんが笑っていただくのを見られないですから」

 体力の消耗をできるだけ防ぐため普段の移動は車椅子。舞台に上がるのも人の手を借りている。そのため歌丸の出番の前は幕が下りる。ところが、幕が上がるとシャンと背筋が立っているのだから面白い。「お客さんの前に出ると自然と背筋も伸びるんですよ。普段はだらーっとしてるのにね。不思議なもんですねえ」

 この日は古典落語の「紙入れ」を演じた。得意先のおかみに誘惑された商人が財布を寝床に忘れて大慌てする話。旦那、おかみ、商人を丁寧に演じ分け、中でもおかみの色っぽさは絶品。しなだれかかるしぐさ、声色、目つきなどはまるで歌舞伎の女形だ。世間は折しも有名人の不倫騒動で真っ盛り。タイムリーな“艶笑もの”で、客席の爆笑を誘った。

 「うまい落語家よりも、面白い落語家を目指しなさい」。芸歴65年の途方もないキャリアを誇り、162人の噺(はなし)家が所属する落語芸術協会会長として、若手にいつもこう諭すのは自身の体験が大きい。

 「戦争が終わってすぐにNHKのラジオで演芸番組を聴いたんです。焼け野原を前にみんなが途方に暮れる中で、大きな笑い声が流れてきました。小学校4年でしたが、子供心に、これだ!と思いましたね」

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2016年4月10日のニュース