志の輔パルコ正月1カ月公演“見納め” 来年は全国巡業構想

[ 2016年2月3日 05:30 ]

千秋楽を迎えた「志の輔らくご in PARCO 2016」

 落語家の立川志の輔(61)が2日夜、毎年正月恒例の1カ月公演「志の輔らくご in PARCO 2016」(東京・パルコ劇場)の千秋楽を迎えた。

 2006年から落語の独演会としては異例の同一会場1カ月公演となり、11年目を迎えた正月の風物詩。パルコ劇場がある渋谷宇田川町15地区が都市開発計画で来年3月から工事に入るため、落語ファンを魅了してきた年始1カ月公演は今回がいったんファイナルになる。

 年末恒例の公演として1996年にスタートした「志の輔らくご in PARCO」は今年20周年。映画化もされた「歓喜の歌」や「メルシーひな祭り」など、新作を毎年のように書き下ろす一方、誇り高き武士の生きざまが感動を呼ぶ人情噺の傑作「柳田格之進」などの古典も重厚に演じてきた。1月開催の1カ月公演になった06年以降は毎年1万人を動員し、最もチケットが取りにくい人気公演の1つになったが、ついに“見納め”となった。

 体調不良による休演は20年間、一度もなく、完走した。ラストとなったこの夜の公演は午後10時終演で、上演時間は最長記録となる3時間半に及んだ。熱演を終えた志の輔は「新しい空間でお会いできることを楽しみに」と恒例の三本締め。「志の輔師匠 祝二十年 お疲れ様でした」の垂れ幕が下がり、ステージには紙吹雪が舞った。

 この夜の公演前に取材に応じた志の輔は「また来年もここに来るんじゃないかな」と苦笑い。パルコ劇場は19年にリニューアルオープン予定で「3年間考える時間をいただき、新しいパルコ劇場を見た時、今までとは違うものが生まれるかもしれない。それを楽しみに待っていていただきたいです」とファンとの再会を約束した。

 今年も例年通り3席。「大黒柱」「新版猫忠」「大河への道」を披露した。新作「大黒柱」は「いつ決まったんだ」をキーワードにした家族の話。「新版猫忠」は古典「猫忠」を3年がかりでアレンジ。「大河への道」は実測による初の日本地図を作った伊能忠敬を描く傑作。4年がかりで作り、11年のパルコ正月公演で初演。「落語でもなければ、講談でもなければ、朗読でもなければ、偉人伝でもない。何だか分からない不思議な作品」で、パルコ劇場だからこそ生まれた思い入れの強い演目を最後に選んだ。

 千秋楽を前に、志の輔は「楽日なので、どんな精神状態になるのかと思っていましたが、初日の方が感極まるような気になって。22回の公演で、毎日、感極まるのを細分化してきて、なるべく最後にみっともないことにならないようにと思いながら過ごした不思議な感覚でした。その日のお客さんにとってはその日が最後なので、毎日がファイナル。きょうが本当に最後のファイナルなので、感激を小出しにしておいてよかったと思います」と心境。

 来年以降は1月のスケジュールがポッカリと空くが「今までは『私、ここでやっていますので、全国から来てください』ということを発信していたんだとしたら、パルコ劇場が新しく生まれ変わるまでのわずか3年かもしれませんが、よろしければ私の方から、少なくとも全国5~6大都市に出向いて、移動しながら初笑いを届けていければと思っているところです。恩返しの1つの形としてできれば」と構想を明かした。

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2016年2月3日のニュース