渡辺謙「王様と私」でブロードウェー沸かせ“もう一つの聖地”へ

[ 2015年5月13日 05:30 ]

ブロードウェー・ミュージカル「王様と私」に主演する渡辺謙

 米ニューヨークのブロードウェーでミュージカル「王様と私」に主演中の渡辺謙(55)が、現地でスポニチ本紙の取材に応じた。米演劇界最高の栄誉とされるトニー賞のミュージカル部門主演男優賞にノミネートされ、6月7日(日本時間8日)の授賞式を前に心境や作品への思いを告白。ブロードウェーと並ぶ演劇の聖地、英ロンドンのウエストエンド進出にも意欲を見せた。

 「全米芸術の聖地」と言われるリンカーンセンターのビビアンビューモント劇場、約1000の客席は満員だ。王様役の渡辺は威厳たっぷりの存在感で劇場を支配。コミカルな英語のセリフで笑いを起こし、力強い歌声で拍手を浴びた。最大の見せ場は女優ケリー・オハラ(39)とのダンスシーン。ダイナミックなステップで「ブラボー!」の大歓声を受け、カーテンコールは総立ちの拍手となった。

 終演後、渡辺は「俳優としてこんなに鍛えられることはない」と充実感にあふれた表情で語った。ミュージカルは初挑戦で、海外の舞台に出演するのも初めて。目の肥えた米国人観客が見守る中、歌やダンス、英語のセリフと格闘。「想像以上のハードルの高さだった」と振り返った。

 3月12日に始まったプレビュー公演の半ばでは「荷物をまとめて日本に帰ろうか」と思うほど自信喪失。オハラら共演者から激励の手紙をもらい奮起した。4月16日の本公演初日は38度の熱が出る中、点滴を受けて舞台に立った。辛口な現地紙からは英語の発音への不安も指摘された。渡辺は「ネーティブの発音は求められてない」と気にしなかったが、「芝居の雰囲気を大切にしながら、言葉の意味をどう伝えるか。その精度は上げた」と努力も怠らなかった。

 そして選ばれたトニー賞候補に「カンパニー(共演者、スタッフ)への感謝を実感している」と話した。同作は9部門にノミネートされており「凄いカンパニーの一員という意識はある」と手応えを感じている。

 トニー賞授賞式では候補者らによるショーが恒例。当日は舞台上でオハラとダンスを披露するといい、「喜びよりプレッシャーの方が大きい」と苦笑いした。

 作品は年末までのロングラン公演が決定。渡辺は現在のところ7月までの出演予定だが「また戻ってきたい」と希望している。ロンドン公演にも強い意欲を見せる。「イギリスの舞台に出るというのは大変名誉なこと。ブロードウェーと双璧のウエストエンドに乗り込んでみたい」と力を込めた。世界の演劇史に名を刻む歩みは、まだ始まったばかりだ。

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