有村架純 女優の矜持 模写ではなく自分らしい「ビリギャル」を

[ 2015年4月21日 09:00 ]

吸い込まれそうな瞳が印象的な有村架純。「ビリギャル」で家族の絆を好演した

 みるみる大きな存在になってきた。ドラマ、CMと、お茶の間でもこの愛らしい顔を見ない日はない。5月1日には主演映画「ビリギャル」が封切りを待つ。劣等生が難関の慶応義塾大学に合格を果たす話。その慶応の応援歌「若き血」の歌詞を借りれば、有村架純(22)の行く手に♪遮る雲なきを~!

 この和み顔、王道をいく。周りにも「癒やされるねえ」と目尻を下げる人間が実に多い。ならば、でっかいスクリーンで拝みましょうよ。

 金髪、へそだし、超ミニスカ…とビジュアル面の話題が先行するが、コメディエンヌとしての力量も大変なものだ。都内で6日に行われた披露試写会で「スースーして、撮影中も(下着が)見えないか、ひやひやした」とおちゃめなところを見せたが、確かな演技で爽やかな感動を誘う。

 「ビリギャル」は実話がベース。モデルとなった「さやかさん」は現在27歳のミセス。結婚プランナーの仕事を経て、いまは専業主婦という。

 「撮影には毎日顔を出されていました。一応、(名古屋弁の)方言指導という形でいらっしゃったんですけど、むしろ現場スタッフさんみたいに、いろんな物を運んだり、スタンドインとして立っててくれたり。寒い中、一緒になって(映画を)作ってくれました」

 感謝の言葉があふれる。マンツーマンで指導して「さやか」を奇跡に導いた塾の講師、坪田信貴氏の原作は65万部超えのベストセラー。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」という本のタイトルが、内容をストレートに伝える。

 「ご本人は、本当にそんなギャルだったの?って思うくらい、全然そんなふうには見えませんでした。それよりも、みんなから愛される方なんだって、お会いした時にすぐに感じました。すごく優しい雰囲気だったし、あったかい人でした」

 中・高エスカレーター式の学校に通っていたから、勉強もせず遊びほうける日々。高2になり、このままではマズイと見かねた母親の勧めで学習塾通いが始まるが、何せ「聖徳太子」を「せいとくたこ」と読み、「太った女の子」だと信じ込んでいた天然さん。むろん福沢諭吉のことも知らない。「さすがにそこまでの人はいませんでしたが…」と屈託なく笑った。

 同時代を生きる実在の人物を演じたのは初めての体験。「ご本人がいらっしゃる分、その思いだったり考えだったりをちゃんと胸に置いて撮影に臨みましたが、映画の中のさやかさんというキャラクターを私なりに演じることが一番大事なことだと思いました。参考にさせていただくことはありつつ、自分らしい“さやかさん”を演じようと」

 模写するのではなく、自分なりの“ビリギャル”にこだわったのは、女優としての矜恃(きょうじ)。懐の深さが垣間見える。「いつものテンションよりも一個分上のところにいたので、ずっと高揚している状態。だから、素の自分に戻ったときには“ふーっ”と一息つきたくなるような感覚でした」と振り返った。

 NHK・BSプレミアムで再放送中の「あまちゃん」で注目を集めてから、1作ごとに存在感が増す。公開中の「ストロボ・エッジ」も興収20億円超えの立派な数字をはじき出す。ビリギャルどころか、同世代のトップランナーとして快走中だ。

 数字で測れないところのある女優業でも、ジャンルを問わず“偏差値”は高い。「持ってますね」と水を向けると、恥じらいがちに「私だけの力じゃないです。周りの方に助けられて生きているようなもので…」と、謙虚な答えを返してきた。

 高校受験を前に、ヒロイン同様に塾講師からマンツーマンで指導を受けたそうだ。学校での得意科目は体育と理科。「遺伝子とか、生物とか、宇宙とか…発見がいっぱいあるのが好きでした」と真顔で明かす。ズブズブの“リケジョ(理系女子)”でもないが、「女優のお仕事も発見がいっぱい」と共通点に喜びを見いだしている。

 坪田先生との出会いが「さやか」の人生を変えたように、有村も多くの出会いに感謝する。「監督さんや共演者の方、いろいろ教えてくださる方はいっぱいいます。なにより仕事をする上で、考え方とか必要なことを教えてくれる事務所の方との出会いも大きかった」

 どんな未来図を描いているのか。「嫌な役はありません。コメディーからシリアスなものまで何でもやってみたい。その中で人の心を動かせるお芝居をやっていきたいと思います」と前を向く。

 まずは公開が近づく「ビリギャル」の“合格”を願う。「受験生や同世代の方はもちろん、お父さんお母さん世代にも見てもらいたい。家族周りの話も生きていると思うので、教育論だったり、家族の在り方だったり、きっとあらためて見直したりする部分がいっぱいあると思います」と、5月1日の初日を見据えた。

 ≪舞台も評判「楽しいと実感」≫魅力は映像の世界にとどまらない。昨年10月には「ジャンヌ・ダルク」でタイトルロールを演じ、舞台デビューも果たした。甲冑(かっちゅう)姿でハードな場面もさっそうとこなすなど、評判を呼んだ。「舞台は生のお芝居をお見せするので、使うエネルギーが全く違う。とても大変だと思いましたが、その分、楽しいと実感する回数が多かった。私はまたやりたい」と、その魅力に虜(とりこ)になったようだ。

 ▼「ビリギャル」 愛知県の高校に通うさやかは学年ビリの成績だが、通うことになった塾の講師の勧めに、軽いノリで慶大受験に挑む。猛勉強が始まるが、なかなか伸びない成績…。映画は奮闘するさやかの姿とともに崩壊しかかった家族の再生も描く。塾の講師に伊藤淳史、両親に田中哲司&吉田羊と、芸達者が脇を固めた。メガホンは「いま、会いにゆきます」「ハナミズキ」の土井裕泰監督。東宝配給。

 ◆有村 架純(ありむら・かすみ)1993年(平5)2月13日、兵庫県生まれの22歳。10年に女優デビュー。主な出演作に映画「阪急電車」「思い出のマーニー」(声)、劇場版「SPEC」シリーズ、ドラマ「あまちゃん」など。来年は映画「アイアムアヒーロー」の公開が控える。特技は料理。

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