国境を越えた「李香蘭」 日中関係改善のヒントも

[ 2014年9月14日 20:48 ]

「李香蘭」の名で知られた山口淑子さん

 戦中、満州発の大スター「李香蘭」として祭り上げられ、日中両国で絶大な人気を誇ることになった山口淑子さん。当時は満州の女性だと思っていたという音楽評論家の瀬川昌久さんは「日本人にはないエキゾチックさで、若い男性の憧れの存在だった」と振り返る。

 李香蘭は文化工作の象徴的な存在だった。瀬川さんは「内心ではじくじたる思いがあったかもしれないが、日本と満州が仲良くなって、平和になってほしいと願っていたと思う」と山口さんの心中をおもんぱかる。

 「後から歴史を裁くことはできるが、その時点では女優として最善を尽くしたのだろう」と話すのは映画評論家の寺脇研さん。「映画史に残る女優は他にもいるが、近現代史に名を残す女優は彼女をおいてない」

 戦後、山口さんは米国などでも活躍する国際派女優だった。寺脇さんは日中関係が悪化している今こそ、彼女のように国境を越えて活躍する俳優を待望する。「日本のアニメや漫画が好きな中国の若者はいるが、あくまでも物。両国民の間に『人』が介在する意味は大きい。両国で愛される俳優が出てきてほしい」

 山口さんの半生は劇団四季の「ミュージカル李香蘭」で語られている。瀬川さんは日中両国で、さまざまな立場の人に見てほしいという。「現在の日中関係は山口さんの心痛の種だっただろう。この作品を見て何を感じるか。ぜひ話し合ってもらいたい」

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2014年9月14日のニュース