赤いシリーズ、渡鬼…宇津井健さん急死 さよなら「理想のお父さん」

[ 2014年3月15日 05:30 ]

宇津井健さん(11年6月撮影)

 二枚目俳優として映画やドラマで幅広い役柄を演じた俳優の宇津井健(うつい・けん)さんが14日午後6時5分、慢性呼吸不全のため、名古屋市内で死去した。82歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で行い、後日「お別れの会」を開く。1年前から肺気腫を患い、知人宅で治療を受けていた。デビューから61年。最期まで健康的で誠実なイメージを守り、厳しさと優しさを併せ持った「理想の父親像」を示し続けた。

 TBS系「赤い疑惑」などの“赤いシリーズ”や「渡る世間は鬼ばかり」などの演技で、「理想のお父さん」として愛され続けた宇津井さんが突然逝った。

 所属事務所によると、約1年前に肺気腫を患った。自宅は東京にあるが、仕事がない時は信頼を寄せる医師がいる名古屋に出向き、知人宅で療養。知人宅には酸素吸入器具など治療に必要なものをそろえ、体調が悪い時は医師の往診で治療を受けていた。

 事務所社長には前日13日に「呼吸が苦しく、具合が悪いようだ」とマネジャーから連絡が入っていた。ただ、命に別条がある様子ではなかったといい、14日に入って容体が急変。最期はフジテレビに勤務する一人息子がみとった。社長は「あまりに急で驚いた。肺気腫の克服に向けて体力づくりもしていたのに」と悼んだ。昨年5、6月に放送された「渡鬼」前後編スペシャルが最後の出演作品となった。

 新人時代から二枚目スターとして活躍した。早大在学中に俳優座養成所に入所。仲代達矢(81)、故佐藤允さんらが同期だった。53年に映画「思春の泉」の主演でデビュー。国産初の特撮ヒーローとされる映画シリーズ「スーパージャイアンツ」(57~59年)で主演した。

 映画界の斜陽とともにテレビに進出。65~71年に放送された主演ドラマ「ザ・ガードマン」は30%を超す高視聴率を記録し、お茶の間のスターとなった。40歳になってからは“赤いシリーズ”で父親役を好演。元歌手の山口百恵さん演じるヒロインが試練に見舞われるたび、感情をあらわにし、手をあげることがあっても、徹底して娘を愛し、守り続けた。その姿に視聴者は魅了され、「理想の父親」のイメージが定着。百恵さんからも慕われ、80年の俳優三浦友和(62)との結婚では仲人を務めた。

 「渡る世間は鬼ばかり」では06年4月から病気で降板した藤岡琢也さんに代わり、5人娘の父親の岡倉大吉役を務めた。

 私生活では61年、友里恵夫人と結婚。45年間連れ添い、06年に肝臓がんで先立たれた。俳優として夫として父親として愛され続けた生涯だった。

 ◆宇津井 健(うつい・けん)本名同じ。1931年(昭6)10月24日、東京都生まれ。60年、「人生劇場」でドラマ初主演。71年には明治座「天下の糸平」で初舞台。「武田信玄」「天地人」などNHK大河ドラマにも多数出演。ほかの出演ドラマにNHK連続テレビ小説「ぴあの」、日本テレビ「ごくせん」など。主演の若手俳優を支える脇役としても不可欠の存在だった。

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