宮崎駿監督“今回は本気”の引退も「やりたいことある」

[ 2013年9月7日 06:00 ]

会見を終え、鈴木プロデューサー(左)と握手をかわす宮崎駿監督

 「風の谷のナウシカ」「千と千尋の神隠し」などの大ヒットアニメ映画を手掛けた宮崎駿監督(72)が6日、東京・吉祥寺のホテルで引退会見を行った。本人不在で行われた、ベネチア国際映画祭での発表から5日。「今回は本気」と長編映画製作から退くことを自らの口で明言。今後について「あと10年は仕事したい」としたが、具体的なプランは明かさなかった。

 世界中が驚いた引退発表から5日。宮崎監督は、国内外から集まった報道陣約600人に「これまで何度も辞めると言って騒ぎを起こしてきた人間です。またか…と思われてるかもしれませんが、今回は本気です」と切り出し、笑いを誘った。

 自身は会見の意思がなかったという。報道陣に配ったA4紙1枚の「公式引退の辞」を手に、「こんなイベントをやる気はさらさらなかった」とテレ笑い。「僕の長編アニメの時代は終わった」と言い切る表情は寂しさも感じられたが、落ち着いた口調は大きな決断を下した安ど感が漂った。

 引退を決意した時期は「覚えていない」とした。だが鈴木敏夫プロデューサー(65)は、公開中の映画「風立ちぬ」の初号試写が行われた6月19日のやりとりを明かした。「鈴木さん、もうダメだ」。2人は84年の「風の谷のナウシカ」からの仲。幾度となく交わしてきた会話だが「今回ばかりは本気と感じざるを得なかった」という。

 アニメーター出身の監督で、演出だけでなく、絵コンテから作画などほぼ全ての工程に携わるスタイル。今作の完成には08年「崖の上のポニョ」から5年を要しており、体力面と精神面の消耗を強調。壇上で眼鏡を外して、テーブルに顔を近づけ「こんなふうに延々と描かなくてはいけない。年々、机に座る時間は少なくなっている」と苦笑いする場面も。「今、次の作品を考え始めると5年じゃすまないでしょう。あと数カ月したら73歳。7年したら80歳。もう長編アニメは無理と判断した」と加齢が引退の理由だと説明した。

 スタジオジブリのスタッフには8月5日に報告。鈴木氏とスタジオジブリの星野康二社長(57)らが9月上旬の引退発表を計画する中で、「風立ちぬ」のベネチア出品が決定。世界の映画人が集まる映画祭での発表を決めたという。

 今後も東京都小金井市のスタジオジブリに通うが、作品には関わらないという。三鷹の森ジブリ美術館(東京)の絵画など、展示物の修正に意欲を見せた。同所で上映されるオリジナルアニメなど、短編製作の可能性はあるが「僕は自由です。やらない自由もあるんです。前からやりたいことはあるが、できないと格好悪いので言わない。アニメじゃありません」と明言しなかった。ジブリの“教え子”たちには「やっと重しがなくなるんだから“こういうものをやらせろ”と声を上げて」と奮起を期待した。

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2013年9月7日のニュース