路上シンガー宮崎奈穂子 手売り8万枚で武道館へ

[ 2012年10月5日 08:00 ]

路上ライブで客の拍手を浴び、感激する宮崎奈穂子

 路上ライブでCDを自分の手で売りながら、東京・日本武道館でのライブという夢をつかんだシンガー・ソングライターがいる。慶応大出身の宮崎奈穂子(26)。路上で売ったCDは8万枚以上。これまでの道程をそのまま歌にした曲「路上から武道館へ」を引っさげ、11月2日に夢のステージに立つ。1人でも多くの人に足を運んでもらうため、公演前日まで路上でPRを続ける。

 4日、横浜市の桜木町でキーボードを弾きながら歌う宮崎。「路上で応援してくださった方に恩返しできるよう、絶対に成功させます」と武道館への意気込みを語った。

 「小さい頃に音楽番組を見て歌手になりたいと思って、そのまま大人になってしまった」という。学生時代は吹奏楽部やバンドサークルに所属し、音楽には触れてきた。ただ「特別可愛くもないし、それほど歌もうまくない。大ヒット曲が書けるわけでもない。普通の女の子です」と言い、決して自分を飾らない。

 慶大3年時、就職活動を始めたが、当たり前のように一般企業に就職することを疑問に思った。音楽の夢も捨てきれない。決断したのは歌手への“就職”だった。

 それ以降、生活の中心は路上ライブ。首都圏を中心に週5日以上、夕方から終電ギリギリまで歌う。夜行バスで地方にも遠征。事務所スタッフは「彼女の仕事場は路上。会社員が会社に出社するように毎日路上に出社するんです」。1人でキーボードを背負い、アンプなどの機材を積んだ約50キロの荷物を運ぶ。駅の階段の昇降はひと苦労。足を止めて聴いてくれた通行人に自分の手でCDを渡す“手売り”だけで、4年間で8万枚以上を売り上げた。

 転機は10年7月。「1年間で有料サポーター会員を1万5000人集められれば武道館公演を行う」という企画を始めた。「無謀だと思ったけど何かやらなきゃ始まらない」と、雨の日も雪の日も路上へ繰り出した。結果、期限が目前に迫った355日目に目標の会員数を突破した。

 生活の中で揺れ動くリアルな感情をそのまま詞にする。最新曲「就職戦線異常あり」では「15分の面接で私が分かるの?教えてほしい」と学生の苦悩を歌った。今年4月には武道館への道のりをつづった「路上から武道館へ」を発表。路上で感じた寂しさや人の温かさを素直に歌っている。

 「武道館を満員にすること」が目標。ステージの設営によるが、同所の最大収容は7000~1万2000人が通常。既に約5000枚のチケットを売っており「私のような普通の人でもありえない夢をかなえられる。夢を追う人、何かを諦めようとしてる人に“私だってできるんじゃないか”と思ってもらいたい」。満員のステージを目指し、きょうもどこかで歌っている。

 ◆宮崎 奈穂子(みやざき・なほこ)1986年(昭61)4月10日、東京都生まれの26歳。慶応大文学部卒。07年10月に自主制作のシングル「優しい青」でデビュー。今年8月にアルバム「My Way~就職は武道館で」を発売。恋人は募集中。身長1メートル57。

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