ほとんど上半身裸 小日向文世“ちょっと切ない”幽霊を熱演

[ 2012年7月8日 15:02 ]

NHK BSプレミアム「プレミアムドラマ~高橋留美子劇場」に出演する小日向文世

 8日から2週にわたり、人気漫画家・高橋留美子の短編集をドラマ化したNHK BSプレミアム「プレミアムドラマ~高橋留美子劇場」が放送される。大河ドラマ「平清盛」での源為義役の熱演も記憶に新しい俳優・小日向文世(58)が、穏やかな笑顔とコミカルな演技をフルに生かし、第1章「赤い花束」で幽霊になった中年サラリーマンを熱演している。

 会社の宴会で裸踊りをしている最中に心筋梗塞で突然倒れ、そのまま帰らぬ人となり、自身の通夜に幽霊となって現れることになった中年サラリーマン・吉本一を演じる。幽霊になった自分の前で、妻の玉代(原田美枝子・53)にも言いたい放題言われてしまう、ちょっと切ない役どころだ。

 オファーを受けた当初は悩んだという。「台本になる前に高橋留美子さんの短編を渡されたんです。それを見て、面白いなと思った。でも、やるとなると、裸になって腹に絵を描くのかと思って…それでうちの女房に話をしたら、高橋留美子さんの作品だよ、絶対やったほうがいいよ!って言われて。それで、やってみようと思ったんです」とオファーを受けた意外ないきさつを明かした。

 回想シーン以外はすべて上半身裸で、お腹には顔が描かれているという特殊な状態での演技。「お葬式のシーンなので、エキストラの方はいっぱいいる。それで、みんな下向いてクククッて笑ってて。それが正直、恥ずかしかった。50代後半のひどい裸なんて見せるもんじゃないね。原田さんも吹き出して何回かNG出してましたね」と苦笑い。それでも仕上がりには満足しているようで、「裸踊りをして心筋梗塞を起こして倒れるシーンはほとんど即興でやらされたんですけど、裸踊りなんてやったことないし、恥ずかしかった。頭にネクタイを巻いてて、(お腹に)絵を描いているなんて、今どきいないだろうとは思ったけど、出来上がったのを見たら、なんか面白かった」と自信を見せた。

 「高橋留美子劇場だから、幽霊になっているだけでクスっと笑っちゃう。奥さんががっかりするようなことをいっぱい言ってるし、幽霊だけどむかっ腹を立てたり、本当に悲しくなったり、素直な感情を吐露していこうと、できるだけリアルにやろうと思いました」。さながら一人芝居のような状態で撮影は進行していくわけだが、「こういうシチュエーションってあるようでなかった。(実際やってみて)とても楽しかったですね。奥さんが全然悲しんでいないってことと、原田さんが吹きそうになっているってことが、重なってちょっと切ない気持ちにはなりましたけど」と本音も。

 「(この作品は)やって良かったとつくづく思いました。良い本に出会えるということは役者として本当に大きい。長い夫婦生活をしていると、当たり前の空気のような感じになってしまう。でも、(吉本一を演じて)何でもいいから、口に出して、コミュニケーションを取ったほうがいいなと、ありがとうって口にしないといけないと思いましたね。少しでも疑問に思ったり、嫉妬したりしたこともできるだけ口にしようと思っています」。

 あと1年半もすれば60代に入る。「これからは若い人に長生きすることも良いことなんだなって思わせたい。年を取ることに希望を持たせたいんです。これからは嫌でもそういう役がくるでしょうし、それに思い切ってぶつかっていくつもり」と力説。「(最後は)できるだけ現役のまま死んでいきたい。僕はぽっくり行きたいですね、だから吉本みたいな生き方はいいのかも。はい、おしまいって終わるのもいいのかな、みんな一度は死んでいくんですから」とサバサバと笑った。

 原作の「赤い花束」「鉢の中」「迷走家族F」の3本から構成する「赤い花束」と、「運命の鳥」「専務の犬」「君がいるだけで」の3本から構成される「運命の鳥」の2話で、郊外にあるちょっとさびれた「さいわい町」という町を舞台に、どこにでもある夫婦や家族の日常を大人の悲哀たっぷりにコミカルに描く物語。第1回が8日、第2回が15日(ともに後10・00)に放送される。

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2012年7月8日のニュース